青龍の間にて、神獣青龍となっているフーガとオリハルコンゴーレムに乗っているミントが対峙している。

「まさか幻の金属と呼ばれているオリハルコンを、この世界に呼び寄せるとは思わなかった」

 フーガはミントの実力を少し侮っていた。ここまでの錬金術師だとは思わなかった。放出系魔導錬金術と錬金術の融合。その象徴とも言えるオリハルコンゴーレム。その肩に乗っているミントの姿を見る。

「……魔力が今まで以上に大きいのです」

 ミントは青龍の姿となっているフーガを見て思った。さっきよりも魔力が拡大に上がっているのは、さっきのブレスで理解している。

「……でも、負けられないのです。お兄ちゃんの為にも」

 ミントは上で戦っているであろうハクトの為にもここで負ける訳にはいかないのだ。

「……さあ、発進なのです。オリハルコンゴーレム」

 ミントの言葉にオリハルコンゴーレムが雄叫びを上げる。

「あちらはやる気がありますね。では、こちらも行くとしますか」

 フーガも大きく咆えてミントとオリハルコンゴーレムを見る。

 

魔法少女の正しい学び方
第六十七話 放出系魔導錬金究極奥義 

 

 フーガが大きく息を吸い込んで、突風の様な息吹を吐き出した。ミントとオリハルコンゴーレムは必死に耐えようとする。

「……このぐらいの突風なら、何ともないのです」

 ミントはゴーレムを操作する為の魔法陣を出してキーボードの様に叩いていく。

「……今度はこっちの番なのです」

 ミントは魔法陣からゴーレムを操作すると、オリハルコンゴーレムは右の拳が後ろに引いてストレートを放った。フーガはそのストレートを上空に上がって回避した。回避したフーガを追いかける様にミントはオリハルコンゴーレムに左の拳でアッパーをする。

「こんなに早くゴーレムを操作するだと……」

 フーガは驚くがそのアッパーもさらに上空に上がって回避する。

「……今のを避けるのですか」

 ミントは上空にいるフーガを見上げる。フーガはオリハルコンゴーレムの拳が届かない所まで上がっていく。これなら、ミントとオリハルコンゴーレムは攻撃する事が出来ない。

 しかし、ミントはキーボードを叩いていくと、オリハルコンゴーレムの背中に付いている翼を広げた。

「……飛ぶのです、オリハルコンゴーレム!」

 ミントがそう言うと、オリハルコンゴーレムの翼の中心からジェット噴射して、空を飛び出した。

「バカな!? ゴーレムが空を飛ぶなんて聞いた事ないぞ!」

 フーガの驚きはもっともである。ゴーレムは巨大な土人形である以上、重量が重過ぎて空を飛ぶ事なんて出来ないはずであるが、ミントの作ったオリハルコンゴーレムは簡単に空を飛んだのだ。

「……ミントのゴーレムに不可能と言う文字はないのです」

 フーガのいる所まで飛んでくるミントはオリハルコンゴーレムに付いている大砲を持たせた。

「……75ミリ魔導砲、発射!」

 オリハルコンゴーレムが大砲を構えると、そこから魔導砲を発射させた。フーガは魔導砲を避ける。

「放出系魔導錬金でそんな物まで具現化させるとは」

 避ける事が出来たけど、放魔でそこまでやれるとは思わなかったフーガ。

「東の風よ。矛となりて全てを貫くが良い。エウロススピア!」

 フーガは正面に魔法陣を出すと東風の槍を何本も放った。オリハルコンゴーレムは的が大きい為、数で制圧しようとしている。しかし、オリハルコンゴーレムは東風の槍を避け続けていく。あの大きさで俊敏に動くことが出来るとはミントの錬金術を侮っていたのかも知れないとフーガは思った。

「……放魔妖剣『白波』!」

 ミントが放魔で何か武器を出してオリハルコンゴーレムに装備させる。

「そ、それは!?」

「……喰らえなのです」

 オリハルコンゴーレムは妖剣白波をフーガの頭にぶつける。

「……君はそれで私を倒せると思っているのですか?」

 フーガは呆れている。何故なら今オリハルコンゴーレムを持っている武器は大きなネギである。

「……やっぱり失敗なのです」

 どうやらミントは妖剣白波を出すのに失敗してしまったらしい。ミントが出そうとしていた白波は強力な妖剣であったけど、出せるのはかなり難しいらしい。

「さっきのお返しだ。南の風よ。疾風の如くその足を加速させよ。ノトスアクセル!」

 フーガは身体に風を纏うと、オリハルコンゴーレムに突っ込んできた。オリハルコンゴーレムは両腕を交差して突っ込んでくるフーガとぶつかった。

「……ぐっ」

 オリハルコンゴーレムの肩に乗っているミントは振り落とされない様にしがみつく。

「まだまだ!」

 突っ込んできたフーガはオリハルコンゴーレムに押されていき、尻餅をつく様に地面に倒れる。

「……こっちも負けないのです」

 ミントはキーボードを叩いてオリハルコンゴーレムを立たせる。

「この程度で倒れないでくれないでほしいね。私は強い者と戦うのが好きなのだから」

「……本当にそう思っているのですか?」

 ミントはフーガを見て思った事を口に出した。

「……貴方達デュアルドラグロードの魔導師達は弱肉強食の様な考えをしているはずなのに、貴方はミントを強い魔導師だと言って戦っている。本当に弱肉強食を信じていると言うのなら、何故ミント以外を狙わなかったのですか?」

 ミントはその辺りが納得出来なかった。デュアルドラグロードは力こそ全てで、強者だけが全てだと言わんばかりの国である。だから、自分達が大陸で一番強いのだと証明する為に、こんなバカな戦争を起こしたのだ。しかし、このフーガはそんな事を考えていないのか、真っ先にこの中で一番強い相手を選んだのだ。

「……そもそも、一対一と言うのがよく分からなかったのです。弱い相手に四人全員で襲い掛かれば、貴方達が全滅する事なんてなかったはずなのです」

「全滅とは言ってくれますね。ですが、君の言う事は分かっているつもりだ。私はデュアルドラグロードのやり方に、多少疑問を思っている。だがな、私は強い相手と戦いたいのさ。弱肉強食を考えているのは他の連中だけだが、私は違う。強い者と戦う事が私の生き甲斐でね」

 フーガはニヤッと笑う。

「……だから、ミントを狙ったのですね」

「ああ、そうだ。あの中で魔力、戦闘力、頭脳と全てトップクラスなのは、嵐山ハクトを除いて君しかいなかったのでね」

「……それは光栄に思って良いのですか?」

「好きにするが良い。では、お話は以上だ。戦いを再開しようではないか」

「……そうですね。ミントもここで立ち止まってはいられないのです」

 ミントはオリハルコンゴーレムを構える。

「……フーガ、強い者と戦う事で自分の強さを証明したいみたいですけど、ミントはそれでも貴方を許せないのです。クリスや皇女様を誘拐して国を攻めて多くの人達を傷付けようとする者と加担するなんて……」

 ミントはフーガを睨みながら放魔を発動させようとしている。

「……ここで貴方を倒す。放魔『デスティニーソード』!」

 ミントが放魔を発動すると空から一本の剣が降ってきて、地面に突き刺さった。オリハルコンゴーレムがその剣を抜いて構えると、オリハルコンゴーレムの背中から金色の蝶の羽の様な粒子が出て来て空に浮いていく。

「ほぉ、まだ奥の手があったのですね。やはり私の目に狂いはありませんでしたね。では再開しようではないですか!」

 フーガは上空に上っていき、風魔法を放った。オリハルコンゴーレムはそれを耐えて、デスティニーソードを振り下ろした。フーガは避けて牙を使ってオリハルコンゴーレムの肩を噛み付いた。

「……このぐらい、問題ないのです」

 ミントは噛み付いているフーガに向かって双剣を出して投げつけた。フーガは噛み付くのを止めて、双剣の攻撃を避けた。

「西の風よ。剣となりて斬りつけよ。ゼフィロススラッシュ!」

 フーガが西風の剣を一振りすると、オリハルコンゴーレムのデスティニーソードとぶつかった。衝撃で周りが吹き荒れる。

「やりますね……」

「……強い相手と戦って嬉しいのですか。でもね、それならまず先に戦わないといけない相手がいるのではないのですか。こんなバカな事をしでかした人達を止めなければならなかったのです」

「っ!?」

 フーガが驚く様な表情をしている。

「……ゼーガのやり方を知っていながら貴方は止めなかったのです。それは弱肉強食を認めていると言う事になっているのです。ですから、強い者と戦いと言うのなら、ゼーガとサイガと戦えば良いじゃないのですか。なのに、貴方はミント達と戦っているのです」

「あの二人はバケモノだ。私の力では勝つ事なんて出来ない。だが、シャインヴェルガも同じ様な物ではないのか。君達もまた力でクラスを決められているではないか」

「……確かにそうなのですけど、ミント達は弱いと分かっているから強くなりたいと思っているのです。それは上のクラスになる事ではなく、ミント達がみんなに認められてほしいからなのです。戦争して自分達が強いと思っている人達と一緒にしないでほしいのです。だからミントも負けられないのですよ!」

 ミントはオリハルコンゴーレムを空に飛ばしてフーガよりも高く飛んでいき、デスティニーソードを構えて突っ込んでいく。

「負けられないのはこちらも同じだ。私もここまできて負ける訳にはいかないのだよ!」

 フーガは大きく息を吸い込んでいき、身体の魔力が上がっていく。

テンペストブレス!」

 フーガが口から嵐の息吹を放った。ミントとオリハルコンゴーレムはその突風の中に突っ込んでいく。オリハルコンゴーレムの身体がどんどん壊れていく。

「……このまま終われないのです。オリハルコンゴーレム!」

 ミントはオリハルコンゴーレムに魔力を送っていき、強化させていく。

「ならば、これで砕け散るがよい。テンペストブラスト!」

 フーガがさらに強力の嵐の咆哮を放った。オリハルコンゴーレムはついに身体が壊れていき大爆発した。

「ふっ、漸く終わったか……」

 フーガは勝利を確信していた。

「……まだまだなのです!」

 すると、上空からミントの声が聞こえた。フーガは上を見上げた瞬間、身体にデスティニーソードが突き刺さった。

「ぐわぁぁ〜〜!」

 不意を突かれたフーガは苦しみだす。

「……行くのです。放魔究極奥義!」

 ミントがそう言うと、空に巨大な魔法陣が出現する。

『黄金の神王像』!」

 巨大な魔法陣から巨大黄金像がゆっくりと落ちてきた。

「な、何だ、あの黄金像はぁぁぁぁ〜〜!」

 フーガは見上げたそれは、にやりと笑っている謎の男の黄金像が落ちてきた。そして落ちてきた黄金像はフーガを上に落ちてきて、そのままフーガを地面に落ちていった。

 ミントはそのまま地面まで落ちそうになったが、放魔で地面に大きなクッションが出て来て直撃を免れた。黄金像はそのまま消滅していった。その下から人間の姿に戻ったフーガが倒れている。

「……まさか、あんな攻撃で私が敗北するなんて……」

「……神の黄金像は回避、防御不能の一撃必殺の対界魔法なのです。だけど発動させるのがとても難しいのですけど、ミントには負けられない理由があるのです。今も頑張っているみんなとシャインヴェルガを守る為に戦っているのです。貴方の様に強い相手と戦う為に戦っているわけではないのですよ」

「なるほど……守る為に戦うか……確かにそれは私達では考えられない事だな……ミント・J・ウィリアムよ。私はお前と戦えた事を誇りに思っている……」

「……ミントもなのです」

「なら、心して聞くが良い。今シャインヴェルガの魔法学校に私達デュアルドラグロードの魔法学校が攻めているはずだ。総勢100人の魔導師達が君達の魔法学校を潰そうとしている。それともう一つ。ゼーガは今この浮遊城にある魔導陽電子砲をもう一度撃とうとしている。それを止めるには我々四神獣の牙に付けられているこの魔水晶と玉座の間に捕らわれている天空の魔法少女を封印している魔法陣を破壊しなければならない。あれが発動すれば魔法学校は跡形もなく消されてしまう」

「……あれが再び撃たれるのですか」

 ミントは目を見開いて驚く。最初に撃たれたあの魔導陽電子砲。あの時はマーカス校長が全魔力を使って防ぐ事が出来たけど、今度はそうはいかない。マーカス校長が倒れた今、誰も魔導陽電子砲を止められる者はいないからだ。

「玉座の間にはサイガがいる。恐らく嵐山ハクトと戦っているが、奴はバケモノだ。正直言ってあいつに勝てる奴なんていない」

「……そんな事ないのです。ミントはお兄ちゃんを信じているのです。シャインヴェルガは壊されない。魔導陽電子砲も止めてくれるのです」

「……そうか。それがお前達の強さだったな。私もすっかり忘れていたよ。強い者と戦う事で自分の強さを知ろうと思ったのは、君達みたいに誰かを守りたいから強くなりたいと、小さい頃そう思っていたのに、いつの間にか道を間違っていたみたいだな」

 フーガは小さい頃たくさんの人を守る為に魔導の道へ進み強くなろうと思っていたけど、デュアルドラグロードの魔法学校に入ってから、学校の雰囲気に飲み込まれていつの間にか強い敵と戦って自分の強さを知ろうと思い始めてしまったのだ。

「……また一からやり直せば良いのです」

「そうだな。私も…いやあいつらもやり直せれば、きっと変われるのかも知れないな……」

 そう呟きながらフーガは眠る様に気を失った。そしてフーガの胸に付いていた魔水晶が壊れて結界が溶けていった。

 ミントは周りを見るとそこは先程みんなと一緒にいた部屋だった。

「ミント!」

「ミントさん!」

 すると後ろからシャーリーとライチがやってきた。

「……シャーリー、ライチ。無事だったのですね」

 ミントは二人が無事で安心する。

「みんなが揃ったと言う事は四神獣の牙は全員倒したと言う事になるんだね」

 シャーリーの言うとおり、部屋には玄武のヒョウガ、朱雀のエンガ、青龍のフーガが倒れていた。そしてどこかで白虎のライガも倒されたから、こうしてみんな揃う事が出来たのだ。

「……タイガーもきっと無事だと思うのです。ミント達も急いでお兄ちゃんの所に向かうのです」

「そうですわね。ハクト様とクリスさんが、この上にいらっしゃるのですわよね」

 ライチが部屋の奥にある階段を見つける。

「……シャーリー、ライチ、今から傷を治す薬を作るからちょっと待っていて欲しいのです」

「ええ、それを飲んだらハクトに加勢に行きましょう」

 シャーリーがそう言うとライチとミントは頷いた。

(待っていて、クリス、レナ、ハクト……)

 シャーリーは階段の先にいるハクト達を心配する様に見つめる。

 

(続く)

 

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ハクト「皆さん、はじめまして」
クリス「本日は『魔法少女の正しい学び方』を読んでいただき、誠にありがとうございます」
レナ「皆さんに喜んでいただけましたら幸いです」
シャーリー「お疲れ様ね」
ミント「……お疲れ様です」
ライチ「皆様、本当にお疲れ様でしたわ」
ハクト「お久し振りですね。作者め……一体どれだけ時間を掛けているんだよ」
クリス「し、仕方ないよ。作者さんも結構大変でしたから」
シャーリー「あれを大変だと言うのかしら? ただ単にサボっていたの間違いじゃないの」
レナ「それを言ってはいけない」
ライチ「KYですわよ、シャーリーさん」
シャーリー「な、何ですってぇ〜〜!? あんたに言われたくないわよ!!」
クリス「まあまあ、二人とも……あれ、ミント?」
ミント「……」
ハクト「何かさっきから隅っこでいじけているんだよね。掲載するのが遅かった上に、何だか簡単に終わってしまったことが不満みたいで」
シャーリー「あれが簡単に終わったって……結構接戦だったじゃない」
ミント「……ミントはもっとはっちゃけたかったのです。もっと放魔でボケたかったのです」
ライチ「そっちを気にされていたのですか!?」
クリス「でも妖剣を出そうとしたけど、実はネギでしたと言うのは面白かったと思うよ」
ミント「……あんなのでは満足出来ないのです。デスティニーソードを出した時も、『みんな、あんたの所為なのです!!』と叫んで種が割れるシーンが欲しかったのです」
シャーリー「まさかの種デスネタ!? あの剣はそれをモチーフにしているのよ!?」
レナ「作者がガン○ムシリーズで一番見ていたからね」
ハクト「確かに自由よりも運命の方が好きだって言っていたよね」
ライチ「それと最後に出したあれは一体何でしたの?」
ミント「……あれは神界の王の黄金像なのです。教会にある神像の巨大化した物を放魔で出したのです」
ハクト「いや、あれは呪いの黄金像で有名じゃなかったっけ? 確かに装備すると外す事が出来ないと言う呪いのアイテムだと」
クリス「私も聞いた事がある。それを持って『助けて、神様』と叫んだら、中から変なおじさんが出てくるって言う……恐ろしいアイテムだ」
シャーリー「そんな物に潰されたフーガって、最悪な倒され方をされたね」
レナ「でも、これで四神獣の牙は全員倒した。あとはサイガとゼーガだけですね」
ライチ「そうですわね。あとはハクト様だけですわね」
ミント「……お兄ちゃん、早くしないと魔導陽電子砲が再び撃たれようとしているのです」
ハクト「ああ、そうだな。そうなる前に俺達で止めてやるよ。そしてクリスを助ける」
クリス「はい、信じていますよ、ハクトさん」
レナ「私もマスターの為に戦う覚悟です」
ミント「……お兄ちゃん、そろそろ時間なのです」
ハクト「そうだな。それでは本日はここまで」
クリス「これかも『魔法少女の正しい学び方』を応援して下さい」
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ライチ「では、また次回お会い致しましょう」
シャーリー「それじゃあ、みんな」
ミント「……バイバイ」
 
 
 
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