玉座の間にて、クリスを縛っていた魔水晶の四つが全て破壊された。
「これで……全部……」
クリスはこれで漸く自分が解放されるのではないかと期待する。しかし、その時クリスは何か邪悪な気配を感じた。この悪寒は一体何か……
「もしかして、あの魔水晶は……ハクトさん!?」
クリスはサイガと戦っているハクトに向かって叫ぶ。ハクトも魔水晶が全て壊れている事に気付いている。
「本当に使えない奴らだな。一人も倒せないまま、逆に倒されてしまうなんてな。だが、親父の言うとおりだったぜ。これで俺達の勝ちだな」
「どう言う事だ?」
「親父が決着を着けるのだよ。さっき破壊された魔導陽電子砲が修復されて、今チャージが完了したんだよ。四神獣の牙達が全員負けた時、魔導陽電子砲が発射出来る様にしてあるのだ」
「魔導陽電子砲を……再び撃つつもりなのか」
「そうだ。これで俺達の勝ちになるのさ。そして、お前との勝負もな」
サイガは右の拳を構える。そこから黒い炎が纏わせる。
サイガは黒い炎の拳をハクトに向けて放たれた。ハクトは黒い炎の拳を躱す。
ハクトは左の拳に炎を纏わせて、サイガの腹にぶつけた。
「がはっ!?」
ハクトの攻撃によって吹き飛ばされるサイガ。今までの攻撃の中で一番効いているみたいだ。
(な、何だ……今の攻撃は? 避ける事も防ぐ事も出来なかっただと? この俺が……)
サイガは今までのハクトの攻撃を難なく避けていたのに、今の攻撃は避けられると思っていたのに、急に拳の速さが増した所為で避ける事が出来なかった。
「俺達の勝ちだと……悪いけど、あいつらが勝った以上、俺も負けられなくなったんだね。ここからは本気で相手になってやるよ。サイガ」
ハクトは拳を構える。吹き飛ばされたサイガは起き上がる。
浮遊城デュアルドラグロード魔法学校の中枢には、この浮遊城を動かしている部屋があって、そこの中央の椅子にてゼーガが座っていた。
「魔導陽電子砲の修復は終わっているな」
「はい、ゼーガ先生。チャージの方も完了していますし、リミットコードを付けていました魔水晶もすべて破壊されていますので、いつでも撃てます。トリガーをそちらに回します」
部屋にいる教師がゼーガに報告すると、ゼーガが座っている椅子から、銃の様な物が出てきた。
「さあ、これで終わりにしてやるよ、シャインヴェルガよ」
ゼーガがトリガーを持って、今まさに撃とうとしている。
「レナ、今だ! クリスを磔にしているあのスタンドグラスに向かって撃て!」
ハクトは待機していたレナに向かって叫んだ。
「レナちゃん!?」
すると、スタンドグラスが割れるとそこに大きな魔法陣が出現した。レナはこれが魔導陽電子砲の魔法陣であると考えて、レナはその魔法陣を斬った。魔法陣はパリンと割れてレナの魔導殺しNO07に吸収されていった。
「な、何っ!?」
サイガはまさかあの魔法陣を見つけられた上に何重にもシールド魔法で守られていた魔法陣を斬られてしまうなんて思わなかったのか、かなり驚いている。
そして、クリスを拘束していた魔法陣を消えて、クリスは地面に落ちていく。
「クリスちゃん!?」
「……ブレイブスター! システムコード、リリース!」
「ありがとう、レナちゃん。おかげで助かったよ」
「うん、そうだね。ブレイブスター、エンジェルフェザーモード、起動!」
『はい、マスター!』
「……良かった。どうやら成功したみたいだな」
ハクトは漸くクリスを助ける事が出来て安堵する。
中枢の部屋でもレナの攻撃によって魔法陣を壊されてしまった為、魔導陽電子砲を撃つ事が出来なくなってしまった。
「どう言う事でしょうか。まさか玉座の間にあった魔導陽電子砲の魔法陣を破壊されてしまったのでしょうか」
「……みたいだな。やってくれたな、あのガキどもめ……」
ゼーガはトリガーを握り潰した。
「仕方ない。シャインヴェルガの魔法学校に攻めている100人の魔導師達はどうした?」
「彼らは直に魔法学校に到着しまして、潰しに入ります」
スクリーンに100人のデュアルドラグロード魔法学校の生徒がシャインヴェルガ魔法学校に向かっている。
シャインヴェルガ魔法学校では、蒼氷竜が氷のブレスを吐いて、攻めて来ているデュアルドラグロード魔法学校を吹き飛ばして、屋上ではカリムがエクスカリバーで魔導拡散砲を次々と撃ち落していく。
「はぁ…はぁ…はぁ……保って、エクスカリバー」
カリムはずっとエクスカリバーの放っているので、魔力が切れかけている。剣先を地面に刺して膝を着いて息を整える。
しかし、浮遊城からまたしても魔導拡散砲が飛んできた。カリムは無理に身体を起こそうとしてエクスカリバーを構える。しかし、魔力を解放して放つまでに時間が掛かる。
「弾けて、燃え尽きやがれ!」
すると後ろから銃声の音と共に叫び声が聞こえた。魔導拡散砲はその銃弾に全て撃ち落されていく。
「……教官」
カリムは後ろを振り返ると、そこにはベルモット・ホークアイ教官が背後に大量の魔法陣から銃が出てきていて、そこから発射されたのだ。
「はっはっはっ! 俺様の無限の銃がある限り、この魔法学校を撃てると思ったか、バカどもめ! 喰らいやがれ!」
ベルモット教官は大笑いしながら銃を撃ちまくる。
そして校門で立ち塞がっている蒼氷竜の前に100人のデュアルドラグロード魔法学校の魔導師達がやってきた。魔導師は射撃系の魔法を蒼氷竜に向けて放ってきた。蒼氷竜は氷のブレスで攻撃を防ぐが、さっきまでの魔導師達とは違って、強さが違う。100人の魔導師達は一斉に魔法を撃ち続けていく。蒼氷竜は何度も氷のブレスを放って、100人の魔導師と戦うが、最初に来ていた魔導師達とも戦い続けていたので体力が少なくなってきている。その為、ブレスの威力も減ってきているので、このままでは蒼氷竜の体力が尽きてしまう。
だが、それでも蒼氷竜は止める事はしない。ハクトにここを守る様に言われている以上、何が何でもここを守るであろう。たとえ命が尽きようとも。だからこそ、最後まで戦い続ける。しかし、100人の魔導師はそんなのお構いなしである様に攻撃を続ける。
そして蒼氷竜はブレスを吐く事が出来なくなって、倒れそうになった。しかし、倒れるわけにはいかないと思い、倒れない蒼氷竜。
「今だ、このまま魔法学校を潰しに行くぞ!」
デュアルドラグロード魔法学校の魔導師達は叫びながら、魔法学校へ向かおうとする。蒼氷竜は通さない様に雄叫びを上げる。
しかし、その時だった。彼らの前に一本の剣が降ってきた。
「な、何だ? どこから降ってきた?」
「あ、あそこだ!?」
一人の魔導師が空に向かって指を指すと、そこにいた魔導師は地上に降りてくる。
「蒼き竜よ。お前の頑張り、私が保障する。ここからは私が引き継いでやる」
両手に剣を持っている赤い髪をした魔法学校中等部の生徒会長ライム・シュナイザーが立っている。
「あ、あいつは……まさか、あの魔法学校最強の女魔導騎士ライム・シュナイザーじゃないか!?」
「な、何だと!? かつて南にある200匹の魔物をたった一人で倒したと言われた魔導騎士だと!?」
「だが、あいつは俺達の魔法学校に行っていたのではなかったのか、まさか戻ってきたと言うのか。こんなにも早く戻ってくるなんて」
デュアルドラブロード魔法学校の魔導師達はライムの姿を見て立ち止まる。
「私一人だけ戻ってきたのだ。他の者は今もデュアルドラグロードに向かっているが、魔法学校があんな所にあるとは思わなかったよ」
ライムは部隊を引き連れてデュアルドラグロードに向かっていたが、途中で魔法学校が襲われていると聞いて、他の者達に向かわせて、ライム一人だけここに戻ってきたのだ。
「ここは未来の魔導師を育む為の学び舎だ。それを潰すと言うのが、どれだけ魔導を学ぶ者達を侮辱しているのか解っているのか、お前達は」
ライムは剣を構える。
「ひ、怯むな! 相手はたかが一人だ。こっちは100人もいるんだ。数でならこちらの方が勝っている。数で押せばあの女魔導騎士だろうと勝つ事が出来るんだ!」
デュアルドラグロード魔法学校の魔導師達は一気に攻めようと校門へ向かおうとしている。
「そうか。お前達が戦争を望むと言うのなら、良いだろう」
ライムは覚悟を決めると、背後に魔法陣が現れて100本の魔法剣を出した。
「お前達が100の魔導師なら、こっちは100の剣でお前達の相手をしてやる。かかって来るが良い!」
ライムは剣を構えてデュアルドラグロード魔法学校の魔導師達100人に突っ込んでいき、一振りすると何人かを吹き飛ばした。
「な、何て速さだ!」
「怯むな! 一斉射撃用意、発射!」
魔導師達は射撃系魔法でライムではなく魔法学校を狙ってきた。すると、何本の剣が射撃系魔法を喰い止めた。
「私を倒さない限り、魔法学校には傷一つ付けさせない。まずはこの私を倒してからにするが良い!」
ライムと100人の魔導師達の戦い。冷静に考えれば、数に勝るデュアルドラグロード魔法学校の魔導師達の方が優勢に見えるけど、ライムの脅威の速さと剣捌きに次々と倒されていく。
屋上では魔導拡散砲を喰い止めているベルモット教官は次々と銃を放ち続けていく。
「ラズベリーよ。後は俺様に任せて、お前は行くべき場所があるだろう」
「教官、ありがとうございます」
カリムはエクスカリバーを納めると、屋上から飛び降りて校庭に着地すると、倒れている蒼氷竜の所にやってきた。
「ごめんね。辛いだろうけど、もう少しだけ頑張ってくれないかしら」
カリムは鞘を取り出して蒼氷竜の身体に翳すと傷を癒してあげる。
「教授は大丈夫ですか?」
カリムは校庭で座っているジン先生に声を掛ける。ミントに毒を治してもらってから、ここで身体を休んで体力と魔力を回復していて、暢気にタバコを吸っている。
「ああ、だいぶ回復はしている。あいつらは大丈夫だろうか?」
「きっと大丈夫ですよ。子供達を信じてあげるのも大人のやる事ですよね、教授?」
「……そうだな。しかし、ここもいつまでも保つか」
いくらベルモット教官が喰い止めていると言っても、一人では先程カリム同様魔力が保つとは思えない。すでに他の生徒達は地下のシェルターに避難していると聞いているので、ここに残っているのは自分達だけである。
「先生!」
すると、校舎から続々と生徒達がやってきた。それはEクラスのみんなである。
「お前達!? 何故、ここに来た!? 早くシェルターに戻れ!」
ジン先生はこっちにやってくるEクラスのみんなに怒鳴りつける。しかし、彼らは立ち止まらずジン先生の所にやってきた。
「俺達も戦います。嵐山や先生が戦っているのに、俺達だけ隠れるなんて嫌です」
「ここは私達の学校です。だから、私達で守りたいのです。シャーリーさんやミントさん、ライムさんもあそこで戦っているのでしょう。でしたら、私達も戦いたいのです」
Eクラスの生徒達は全員戦闘準備をしている。
「お前達……」
ジン先生はただ唖然としているだけだった。
「教授、教え子達が頑張ろうとしているのですから、ここで帰してあげるのは汚い大人になってしまいますよ」
「もとより俺は汚い大人ですけどね。まったく嵐山め、覚えておけよ。分かった。だが、無茶だけはするんじゃないぞ、お前達。自分の出来る事だけをする事。一人で出来ない事は仲間と一緒にやるんだ。いいな!?」
「「はい、先生!」」
Eクラスの生徒達は笑顔で頷いて飛んでくる魔導拡散砲に向けて魔法を放つ。ジン先生はタバコを捨てると立ち上がった。
(おいおい、ジン先生よ。まだ身体が治りきっていないはずだろう。まだ休んでいた方が良いぜ)
(そうはいかなくなったからね。生徒が頑張っているんだ。教師の俺がいつまでも休んでいるわけには行かないじゃないか。俺の教え子は俺が守るのだからな)
(愚問だったな。だったらしっかり守ってやろうじゃねえか!)
(当たり前だ!)
ジン先生は魔導拡散砲のいくつからを封じ込めて指を鳴らして大爆発を起こす。ベルモット教官もマシンガンやバズーカを使って次々と撃ち落していく。
「さすが教授と教官ですね。それじゃあ、私達も行きましょう」
カリムは蒼氷竜の背に乗ると、蒼氷竜は翼を広げて飛び上がった。
「目指すはデュアルドラグロード。早くあの眠り姫を助けてあげないとね」
カリムと蒼氷竜は空を飛んでデュアルドラグロードに向かった。
魔法学校ではEクラスの生徒達とジン先生にベルモット教官が浮遊城から攻撃してくる魔導拡散砲を撃ち落していく。
そして校門では100人のデュアルドラグロード魔法学校の魔導師達に対して1人で挑んでいるライム会長は次々と魔導師達を倒していく。
シャインヴェルガ魔法学校の戦いはまだまだ続くのである。
(続く)