玉座の間で、魔導陽電子砲の魔法陣を破壊したハクト達。
「魔導陽電子砲の気配が完全に消えたか。どうやら、成功したみたいだな」
ハクトは玉座の間にあった邪な魔力を感じていたが、それがついに消えた事でホッとする。
「な、何故だ……何故お前はあの魔法陣が分かったんだ? あれは貴様の様な奴が見つけられないはずだ」
「……勘だ」
ハクトはしれっと言った。
「まあ、この部屋に入った瞬間に邪な魔力を感知したのがいたからな。それのおかげかな」
「クリスを拘束していた魔水晶が魔法陣を完全にロックしていたからな。すぐに破壊する事が出来なかったんだ。だけど、シャーリー達が四神獣の牙を倒してくれたおかげで、ロックが外れてお前達も魔導陽電子砲を発射させようとしていただろう。だから、その時がチャンスだと思ってレナに壊してもらったんだ。よくやってくれた、ありがとうな、レナ」
ハクトはレナの頭を撫でてあげる。レナは少し微笑んで喜んでいる。
「クリスもよく頑張ったな。遅くなってごめんな」
「いいえ、みんなが助けに来てくれると私は信じていました」
クリスは少しだけ涙を零しそうになったが、ハクトの前で泣かない様に目を擦って涙を拭った。
「クリス、レナ。二人は下がっていろ。サイガは俺が決着を着ける」
「分かりました。頑張ってください」
ハクトはクリスとレナに下げさせると、ハクトはサイガと対峙する。
「決着を着けるだと? この俺に勝てると本気で思っているのか? デュアルドラグロード魔法学校で最強と言われているこの俺に」
「井の中の蛙と言う言葉があるのを覚えておく事だな」
ハクトはそう言った瞬間、その場から姿を消してサイガの背後に周っていた。サイガは後ろに振り返ると、ハクトは再び姿を消して、サイガの背後に周る。
「魔導陽電子砲を破壊した以上、気兼ねなくお前をぶちのめす事が出来るからな。存分に暴れさせてもらうぞ」
ハクトは背後から蹴りを喰らわせた。サイガは魔戒神生流裏秘伝の技で対抗するが、ハクトの速さについていけず、攻撃を躱されていく。
「俺に勝てると本気で思っているのかと訊いたな。その問いに答えてやるよ。もちろん、当たり前だろうが! 魔戒神生流剣術『大和』!」
「ぐっ……ここまで力があったとは思わなかったぜ……だが、所詮そこまでだ」
「何が言いたいんだ?」
「その黒い刃、お前だけが使えると思ったか?」
「えっ?」
ハクトはサイガの言った事が理解出来なかった。
「そろそろ、お前と同じ舞台で戦ってやるよ」
サイガは上着を脱ぐと、ハクトとレナはサイガの胸に埋め込まれている黒いドライブコアに驚いた。それはハクトとレナと同じ黒い水晶だからだ。
「それって、まさか!?」
『ハクト、気を付けて! あれは間違いなく本物よ!』
レイもあれが本物である事に驚く。
サイガが叫ぶと、黒いドライブコアが光り出して、彼の右手が黒い刃に変わった。
サイガの声が一気に変わった。
レナは3年ぶりに聞くかつての兄の声に驚く。
「……お前は確か、3年前にお前達のお父様と言う奴に喰われたんじゃなかったのか?」
3年前、あの研究所で00と呼ばれるレイ達の父親とも呼ばれていた男が02達を殺して、ドライブコアを取り込んだと言っていた。
「ああ、確かに俺や他の奴らもあいつに喰われたさ。だがあの時、00がいなくなった時、俺達のドライブコアが世界中に飛び散って、魔導師達の身体に寄生したのさ。お前と01の様にな」
「別にレイは俺に寄生しているわけではないけど、魔導師の中に寄生してその魔力を喰らい続けていると言う事なのか」
「その通りだ。もっとも、俺はこの通り魔導師に寄生しているので、サイガの精神と俺の精神は入れ替わる事になるけどな。まあ、よろしくな」
「それって、他の奴らもどこかにいると言うのか」
「ああ、そうだ。03、05、06の3人も俺と同じでどこかの魔導師に寄生しているはずだ。唯一生存している07、お前の中にいる01、そして消滅したが蘇らされた04.これで魔導殺し達が再び7つ揃ったと言う事になる」
レナは04の遺体を誰にも知られない所で埋葬している。たとえ誰かに掘り返されたとしても、04のドライブコアは無くなっているので、あのまま土と同化しているはずである。
「確かにそうだ、07。お前の言うとおり、04の抜け殻を埋葬したみたいだけど、ドライブコア自体回収していなかっただろう。実は、粉々になった04のドライブコアを回収して、新しく作られたみたいなんだよ。あの所長にな!」
「っ!? 所長って、まさか!?」
「メフィレス……あいつが……」
かつてレナを使って、シャインヴェルガの魔導師を襲撃させた魔族メフィレス。魔神ラグナローグをこの世界に召喚しようとしたが、ハクト達に阻まれて消滅した男。
「どうしてお前がそこまで知っているんだ? お前はサイガの中にいるはずだから、レナやメフィレスがシャインヴェルガを襲っていた事を知らないはずだ」
「それは知っているさ。俺は所長……メフィレスと会った事があるのだからな。デュアルドラグロードにも奴の研究所があって、そこで04を蘇らせようとしていたらしいぜ。お前に復讐する……はずだった」
「はずだった?」
「ああ、しかし04にも感情と言う物があったのか、完成したらすぐにどこかに飛んで行ったのさ。おかげでシャインヴェルガの魔導師を襲撃させたのが07だけとなったのさ」
「そう言う事になるな。どこで何をしているのかは知らねえが……さてと、挨拶も終わった事だし、そろそろ始めるとするか。第3ラウンドを」
「速い……」
「きひひ……どうしたんだ? 3年前より弱くなったんじゃないのか? お前達」
「人の身体を借りているくせに……」
「そうだな。だから、こんな事だって出来るんだぜ」
「魔戒神生流裏秘伝剣術『大和―狼牙―』!」
猛スピードで突進してからの鋭い突きがハクトの左肩に刺さった。
「ぐっ!」
「……飛びな」
02がそう言った瞬間、刺さった刃から爆発を起こして、ハクトは一瞬で壁まで吹き飛ばされて激突する。さっきのハクトの大和とはパワーもスピードも全然違う。
ハクトは油断していたわけではなかったけど、完全に防御の体制をする事が出来ず、左肩から血が流れて、背中には強い衝撃を受けて、口から血を吐きそうになった。
「ハクトさん!」
クリスとレナはハクトの所までやってくる。
ハクトは治癒魔法で何とか傷を癒しているけど、魔力ゲージは一気に下がってしまっている。このままだとすぐに魔力切れを起こしてしまう。
ハクトは何とか立ち上がるが、息も乱れてボロボロの状態である。
「悪いな。それをする為の魔力がもう残っていないんだ……心配するな。手持ちのカードで何とかしてやるさ」
「ハクトさん、私が戦います。ハクトさんはもう少し身体を休めて下さい」
「それも却下。あいつとは俺が決着を着けないといけないんだ」
ハクトはゆっくりと歩き出していく。クリスとレナはただハクトの背中を見る事しか出来なかった。
「きひひ……神に祈る時間は終わったか?」
「じゃあ、今から楽にしてやるよ!」
「このっ!」
「まだそんな元気があるのか。きひひ……そうこなくっちゃな!」
「っ!?」
「万策尽きたみたいだな、嵐山ハクト。それじゃあ、トドメはあいつがやりたいと言っているから、俺はこれで失礼するぜ。じゃあな」
サイガが黒い炎を右腕に纏わせて、ハクトに向けて拳を放った。ハクトはシールド魔法を限界まで張った。
「その程度のシールドなんて意味ないんだよ!」
サイガはさらに魔力を上げて強化してきた。そしてついにハクトのシールドを破壊して、ハクトの身体にぶつけた。ハクトはそのまま吹き飛ばされていき、うつ伏せになって倒れた。
「ハクトさ〜〜ん!?」
クリスの悲鳴が玉座の間に響いた。倒れているハクトの所へ向かうクリス。しかし、ハクトの向かったクリスに向かって、サイガは魔法弾を放った。
「クリスちゃん!」
「ほお、今度はお前が相手になるのか? 良いぜ、もう一度あいつにやらせてやるぜ」
レナが02と戦っている間、クリスは治癒魔法でハクトのケガを治している。しかし、ハクトは一向に目を覚まさない。
「お願い、ハクトさん。目を開けてください! 死なないで下さい!」
クリスは必死でハクトの傷を癒すが、まったく目を覚まさない。クリスは魔力を全て使うぐらいに治癒魔法を使い続ける。
「ハクトさん、お願いします。頑張って下さい! 目を覚ましてください!」
クリスは涙を流しながら必死に叫び続ける。
すると、周りから鐘の音が鳴り響いた。時間は7時になったのだ。そんな時、ハクトの背中にある魔法陣が光り出した。
(続く)