崩れた玉座の間の上空にて、クリスがエンジェルフェザーで飛び回っている。」

「この、ちょこまかと逃げ回りやがって」

 ゼーガは二つの属性を合わせた魔法弾をクリスに向けて放っているが、クリスのスピードが速くてなかなか当たらない状態である。

「な、何て速さなのよ、クリス」

 シャーリーは空を飛び続けているクリスを目で追うとしているが、クリスのスピードが速すぎて目で追いきれない。

「……まるで夜空に流れる流星の如くなのです」

「クリスさん、何だか前より速く見えていますわ」

「クリスちゃんの魔力は前よりも上がっています。魔導師(マスター)、一体どんな練習をさせたのですか?」

「違う、先生があいつとブレイブスターに俺が教えたメニューの10倍をクリスに教えたんだ。そしてクリスはそれを全てクリアした」

 ハクトは紫子からクリスの練習メニューを10倍教えると言って、クリスにその10倍メニューをさせた。最初の方はクリスもすぐにダウンしたが、その後クリスは言った。

『このメニュー、絶対にやり遂げてみせます!』

 そう言って数日後、本当に10倍メニューをクリアさせたのだ。そのおかげで、クリスの魔力が拡大に上がったのだ。

「スター、残り時間はあと何分?」

『31分27秒です』

 ブレイブスターの先端の玉に時間が表示されている。

「よし、頑張りましょう、スター」

 クリスは天使の羽を広げてブレイブスターを構える。

 

魔法少女の正しい学び方
第七十二話 天空の翼 

 

 夜空を飛び回るクリスを必死に撃ち落そうとするゼーガ。しかし、クリスはゼーガの魔法弾を全て躱し続ける。

スターダストシュート!」

 クリスは天空の魔法弾をゼーガに向けて放つ。

「その程度の攻撃など!」

 ゼーガはシールド魔法でクリスの魔法弾を防ぐ。

スターダストシュート、アクセルターン!」

 クリスはスターダストシュートを放つとゼーガの周りをグルグルと回していく。

「いっけぇぇ〜〜!」

 そしてクリスは杖を持っていない左手を横に振ると、回っていたスターダストシュートが一斉に止まってゼーガに向かって全方向射撃がゼーガに向かう。

「甘いですよ!」

 ゼーガは呪文を唱えると全方向にシールド魔法を張って、クリスのスターダストシュートを全て防いだ。

「防がれた!?」

『マスター、相手のシールドは四重魔法陣で構築されたオートバリアシステムです。360度どこからでも防御出来るシールドです。ですが』

「四重と言う事は四つ以上の魔法を同時に放ってブレイクするしかない。だったら、私のやるべき魔法はこれです!」

 クリスは猛スピードで七つの魔法陣を作り出す。

「七星光波! セブンスターレイ!」

 クリスは七つの魔法陣の内、二つから光線を発射させる。ゼーガはそれを四重シールド魔法陣を使って防御する。すると四重魔法陣が一つが破壊された。

「何っ!?」

「よし、壊せる。行きますよ、セブンスターレイ、シールドブレイク!」

 クリスは残りのセブンスターレイの光線にシールドブレイクを付加させて放った。

「しまっ!?」

 ゼーガが気付いても遅かった。残り五つの光線の内、三つがシールド魔法を破壊して、残り二つの光線がゼーガに命中した。

「凄い、クリス。あのゼーガにダメージを与えた」

魔導師(マスター)、クリスちゃん大丈夫なのですか? あんなに魔法を使っていてはいつ魔力切れを起こしても……あれ?」

 レナがクリスの魔力を確認すると、クリスの魔力はあまり減っていなかった。

「クリスの魔力はかなり上がっているから、魔力切れはあまり起きないはずだ。それにクリスとブレイブスターのシンクロ率も100%になっているから魔力は完全に回復しているから、クリスも本気で魔法を使える。それにクリスは何か考えているのだろうな」

 ハクトはエルを確認するとドライブコアに時間が表示されている。

『マスター、残り約5分になりました』

「うん、ありがとう、スター。でも、まだ大丈夫だよね」

『もちろんです、マスター』

 空を飛び続けているクリスに、ゼーガは睨みつける。

「あのクソガキめ……この私を誰だと思っているのだ! ファイアストーム!」

 ゼーガは炎の竜巻の魔法をクリスに向かって放った。クリスはそれを躱していき、もう一度セブンスターレイの魔法陣を作る。

「七星光波! セブンスターレイ!」

「同じ魔法が何度も効くとでも思っているのか、小娘が! テンペストドライブ!」

 ゼーガは落ちてくる七つの光線を水、雷、風の三つの属性を合わせた魔法を放って、セブンスターレイを消滅させた。

三重魔法(トリプルスペル)まで……」
「……大魔導師(ウィザード)の称号は伊達ではないのです」

「だが、クリスはまったく怯んでいないぜ……」

 ハクトは空にいるクリスを見るけど、クリスはまったく驚いた表情をしていない。むしろクリスは今、勝利への方法をブレイブスターと一緒に考えている。

「スター、砲撃魔法(バースト)システムに移行。シューティングスターバーストで撃ち抜くよ」

『了解です、マスター』

 ブレイブスターは砲撃魔法(バースト)モードに変わると、クリスは砲撃魔法(バースト)の構えを取る。

「いっけぇぇぇぇぇ〜〜!」

 そしてクリスはそのままゼーガのいる所まで猛スピードで突っ込んでいく。

「バカめ、血迷ったか!?」

 ゼーガはニヤリと笑って、突っ込んでくるクリスに向けて三重魔法を放とうとする。しかし、いざ魔法を放とうとした瞬間であった。

「突破せよ、流星の如く! ミーティア!」

 クリスがそう叫びと、クリスの姿が消えた。

「な、何っ!? どこだ!?」

 ゼーガは相手を見失って、辺りをキョロキョロと見渡す。しかし、次の瞬間クリスがゼーガの目の前に現れた。

「この距離ならシールドは張れないはずです」

「っ!?」

 ゼーガが驚くが遅かった。すでにゼーガの目の前には四つの小さな魔法陣とその中心にある大きな魔法陣がゼーガをロックオンしている。

「喰らいなさい! シューティングスターバースト!」

 ゼロ距離からの砲撃魔法(バースト)を放つクリス。ゼーガは白い巨大光線に包まれた。

 シューティングスターバーストが放ち終わったクリスは、ブレイブスターを一振りする。流石に魔法をかなり使ったのか、少しだけはぁはぁと息を吐くクリス。

「……やったの?」

「分かりませんわ。ですが……」

 シャーリーとライチがゆっくりと立ち上がって、クリスとゼーガのいた所を見続ける。

「っ!?」

 クリスは目を見開いた瞬間、お腹に魔法弾を喰らって壁まで吹き飛ばされて激突する。

「私を誰だと思っているのですか? 貴様らの様なガキが優秀である私にここまで傷付けるとは、最早万死に値する。覚悟するが良い。ボロ雑巾の様に汚く潰してあげます」

 ボロボロの身体で未だに立っているゼーガ。クリスは痛みを堪えて立ち上がる。

「残念ですけど、貴方の負けです。時間が来ましたので」

 クリスがそう言った瞬間、鐘の音が鳴り響いた。そして、ハクトの背中に刻まれていた魔法陣が光り出す。それはハクトの魔力を完全に回復する魔戒神生流輪廻転生術『黄泉比良坂』である。ハクトの魔力が完全に回復してハクトは立ち上がった。

「サンキュー、クリス。時間を稼いでくれて」

「はい、何とか間に合いました」

 クリスは最初から1人でゼーガと戦って勝てるとは思っていなかった。だから、ハクトの黄泉比良坂が一時間に1回使える事を考えて時間を稼ぐ作戦を考えたのだ。だからゼーガの魔法を空中で避け続けていたのだ。

「ふん、ザコ一匹増えた所で何が変わると言うのですか? すぐに捻り潰して……っ!?」

 ゼーガが魔法を唱えようとすると、ゼーガの右腕に輪で締められる。それはシャーリーが出した拘束魔法(バインド)である。

ローズバインド

「……アルケミックバインド

 さらにライチとミントも拘束魔法(バインド)でゼーガの身体を締め上げる。

「き、貴様ら!?」

「ゼーガ、1人の力ではお前には勝てないかも知れないけど、仲間と力を合わせて戦えば、お前に勝てる。行くぞ、レナ」

「はい、魔導師(マスター)
 レナがハクトの右手を掴んで光り出す。そしてハクトは再び魔導殺しNO107(マジックスレイヤーナンバーワンオーセブン)を起動させた。

「行くぞ、クリス」

「はい、ハクトさん」

 ハクトとクリスは構えると、周囲にある魔力を集め始めた。

「ぶ、集束魔法(ブラスター)だと!?」

 ゼーガはハクトとクリスがやろうとしている事に気付き、すぐにシャーリー、ミント、ライチの拘束魔法を解こうとするが、頑丈で中々解く事が出来ない。そうしている間も、ハクトは魔導殺しNO107の刃に、クリスは前に魔力の集め続ける。

「これで終わりだ、ゼーガ!」

 ハクトとクリスの呪文詠唱は完了して、今まさに集束魔法を放とうとする。

「「っ!?」」

 ハクトとクリスの集束魔法が急に消えてしまった。それだけではない。ハクトもクリスもまるで凍った様に身体が動けなくなっている。二人だけではない。シャーリー、ミント、ライチも身体が動けなくなっている。

「な、何だ……?」

 動けないハクト達を見て、ゼーガはゆっくりと拘束魔法を解いていく。

「ふふふ……ふははははははは! 調子に乗るんじゃないぞ、ガキどもめ!」

 ゼーガは勝ったかの様に大笑いする。ハクト達は何故身体が動けなくなったのか理解出来なかった。だが、ハクトがゼーガの目を見て、それが何か理解出来た。

「お前……これは暗黒魔法か!?」

 そう、ゼーガの左目には黒い紋章が浮かび上がっている。そして玉座の間に巨大な暗黒魔法陣が出現した。

「その通りです。私の最強の魔法。エターナルダークネスフローズン。完全に氷漬けにする究極の魔法です」

「き、貴様〜〜!」

 ハクトは必死に動かそうとするが、足元からどんどん凍り付いてきた。

「貴方達はよく頑張りました。そこは認めてあげましょう。ですが、この私に勝つなんて……100年早いのですよ、ガキが。私は大魔導師です。貴様達の様な最弱の魔導師とは核が違うのですよ。この優秀な私に挑んだ事を後悔して絶望するが良い。そして、貴様らの氷像をあの女と一緒に並べてやり、次に目を覚ました時は処刑台の上にしてやるよ。は〜はっはっはっはっは!」

「ゼーガぁぁぁぁ〜〜!」

 ハクトは叫び、ゼーガは大笑いする。勝負は決した。

 そう、エターナルダークネスフローズンの魔法陣に異変が起きなければ……

「はっ?」

 ビキビキと魔法陣にひびが入りだして、ついにガラスが割れる様に魔法陣は壊れて消滅した。ハクト達の氷が溶けて自由に動ける様になった。

「ば、バカな!? 誰だ!? 私のエターナルダークネスフローズンを壊したのは!?」

 ゼーガは誰が壊したのか叫び続ける。

「っ!?」

 するとハクトは恐怖で身体が震え出した。近付いてくる。ゆっくりとその魔法陣を壊した者がこちらにやって来る事を。そしてその馬鹿でかい魔力に、遅れてクリス、シャーリー、ミント、ライチも身体を震え出した。

「は、ハクトさん……こ、この魔力は……」

『ま、魔導師(マスター)……危険な魔力反応がこちらに近付いてきています』

「ああ、間違いない……奴だ……奴が現れた……」

 そしてその魔力を持った者は扉の前にやってくると、邪魔と呟いて扉に触れると粉々に壊した。

「き、貴様は……何故?」

 ゼーガは理解出来ず、ただ訊く事しか出来なかった。ハクトはゆっくりと扉がある方に振り向いた。

「何故? 何故ここにいるのかって……そんなの簡単じゃない」

 黒い三角帽子を被り、白と黒の魔導服を着た1人の女性が箒を持ってやってくる。歩いている間に壊れている石塊を踏むと粉々に散った。

「お前、私がもっとも嫌いな奴は、私の子供を傷付けて、自分の子供を復讐の道具にして、自分が優秀だといい続ける。そう言う奴が一番、大嫌いなのよ」

 身体から魔力が放出されていて、誰もがそれに恐怖して身体を震わせる。通った後には何も残らない破壊の申し子と呼ばれていた大魔女。

「だから、ここでお前を潰してやるよ。この黒き大魔女(ウィッチ)と呼ばれた嵐山黒狐がな!」
 

(続く)

 

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ハクト「皆さん、はじめまして」
クリス「本日は『魔法少女の正しい学び方』を読んでいただき、誠にありがとうございます」
レナ「皆さんに喜んでいただけましたら幸いです」
シャーリー「お疲れ様ね」
ミント「……お疲れ様です」
ライチ「皆様、本当にお疲れ様でしたわ」
シャーリー「今回クリス凄かったね。あのゼーガと互角に戦えるなんて」
クリス「あ、ありがとうございます」
レナ「いつの間に先生にあんな10倍メニューをやり遂げていたの?」
クリス「ハクトさんが紫子さんと一緒に山篭りしている時に紫子さんから言われたのです。ハクトさんの練習メニューの10倍やってみないかって」
ハクト「それでやる事になったんだよね」
ライチ「そう言えば、前に紫子様の重力結界を難なく歩いていましたわね。あれも練習メニューのおかげですの」
クリス「はい。あんな10倍メニューをやっていましたら、紫子さんの重力結界も軽々になりますからね」
シャーリー「だけどゼーガは相変わらず卑怯なやり方をするよね。あの暗黒魔法を使うなんて、私たち大ピンチになったのよね」
ミント「……でも黒狐さんがやってきて、ミント達を助けに来てくれたのです」
ハクト「ああ、母さんのあれはマジで黒き大魔女と呼ばれていた頃に顔になっていた」
クリス「次回は黒狐さんの本気が見られるのですね。楽しみです」
ミント「……お兄ちゃん、そろそろ時間なのです」
ハクト「そうだな。それでは本日はここまで」
クリス「これかも『魔法少女の正しい学び方』を応援して下さい」
レナ「下の拍手ボタンを押して下さると嬉しいです」
ライチ「では、また次回お会い致しましょう」
シャーリー「それじゃあ、みんな」
ミント「……バイバイ」
 
 
 
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