期末試験が終わったが、一学期の終業式まで一週間残っている。その残りは午前中だけの授業だけする事になっている。
その日の授業が終わり、ハクトはクリスと帰ろうと教室を出ようとした時、校内放送が流れた。
『中等部1年Eクラスの嵐山ハクト、お前に少し用があるから今から教室に行く。そこで待っておけ』
生徒会長であるライム・シュナイダーの校内放送が終わったが、ハクトは理解出来ずに立ち尽くしていた。
「……ハクトさん、また何かやらかしました?」
クリスや教室にいたシャーリーとミントはハクトを白い目で見つめる。
「いやいやいや! 俺は何もしてないぞ! 最近は授業中だってちゃんと起きて受けているし、問題を起こしていないし、生徒会に呼び出される様な事なんてこれぽっちもないって!」
「悪いが、今回は生徒会じゃない!」
「うわぁ〜!?」
教室の入り口で立っていたハクトの背後にライムが現れた。
「い、一体何の用なのですか?」
「悪いけどここで話をするわけにはいかない。さっさと来い」
そう言ってライムはがしっとハクトの制服の襟を掴んで引き摺る様に歩いていく。華奢な身体からどこにそんな力があるのか。ハクトはそのまま引き摺られる様に連れて行かれてしまった。
「……行っちゃったのです」
「と言うより、会長がわざわざハクトを呼び出すなんて、余程の事だね」
「そうだね。それにライチさんのいないのが気になりますね」
クリスはライチの席を見る。先日からライチは体調不良で学校を休んでいる。実技試験には出ていたけど、それからまったく学校に来ていないのだ。
だが、悩んでいた3人は何かに気付いたかの様に電流が流れた。体調不良のライチ、ライムがわざわざハクトを呼び出す為に流した校内放送、そして教室までやって来てハクトを連れて行った。
「「「まさか!?」」」
乙女の直感とはこういう時物凄く当たるのだ。
ハクトが気が付くと、そこには豪邸の前に立っていた。
「あれ? いつの間に学校からこんな所にワープしたんだ?」
「何を言っている。リムジンでここまで来たんだろう。ほら、さっさと入れ」
ライムがドアを開けると、執事とメイドが一斉に頭を下げて「お帰りなさいませ、ライムお嬢様!」と挨拶する。ライムはそんな事をお構いなしに真ん中を歩いていく。
「あ、あははは……本当に漫画みたいな感じだな」
「ボ〜としてないで、さっさと来い」
「お、おお……」
ハクトはライムの後をついていく。廊下もかなり広くて長い。少し道を間違えたら迷子になるぐらいである。
「それで俺に何の用事なのですか。この間の決着でしたら……」
「いや、今日はライチの事で嵐山にお願いしたい事がある」
「そう言えば、最近ライチって、学校に来てなかったよな。風邪でも引いているのか?」
「いや、ただの魔力切れだ。だからお前に来てもらったんだ」
その言葉を聞いたハクトはまさかと思った。
「あの、会長。俺に何をやらせるつもりなのですか?」
「決まっている。ライチの魔力供給を頼もうと思っている。それ以外何の用があるのだ?」
真顔でライムは答える。
「本気で言っているのですか? 会長は魔力供給の事を理解しているのですか?」
「うむ、知っているぞ。まずは男女が……」
「それは違うよ!」
ハクトはライムが説明しようとした言葉を『否定』と言う弾丸で撃ち抜いて論破する。
「あのですね、会長。ここではそう言う事をしてはいけないのです。成人指定にする訳にはいかないのですよ」
「そうなのか。では、どうするというのだ?」
「その辺りは俺の方でライチに説明しますので、ライチの部屋に案内して下さい」
ハクトは目を逸らして汗だくで答える。本当の事を言ったら斬られそうだからだ。
「嵐山、まあお前に全て任せる事にしている。くれぐれもライチの事を頼むぞ」
「はい、それはもちろんです」
ハクトがそう頷くとライムは一つの部屋に止まった。
「ここがライチの部屋だ。あとは任せたぞ」
そう言って、ライムはそのまま廊下を歩いていく。
「あれ? ライチの見舞いに行かないのですか?」
「どうせ会っても私は部屋を出ないといけないだろう。だったら私は会わなくても良いだろう」
ライムは少しだけ微笑んでからその場を去っていった。残されたハクトは覚悟を決めてドアをノックする。しばらくすると中でライチの声がして、ハクトはゆっくりとドアを開けて部屋の中を覗き込む。カーペットを敷いた洋室で、シャンデリアや家具などがあり、ベッドの中でライチが顔まで潜っていた。
「お〜い、ライチ。生きているか?」
ハクトはベッドの近くまで来て、潜っているライチに声を掛ける。
「……は、ははは、ハクト様……いけませんわ……今のわたくしは…殿方に見せられないお姿を…されていらっしゃいますので……」
「別に問題ないって。それよりも顔を出してくれないかな。でないと、布団引っぺがすぞ」
「それは普通女性が男性にするものではありませんか? シャーリーさんから借りましたギャルゲーではそうでしたけど」
(あいつはライチに何をさせているんだよ……)
ハクトは苦笑いする。シャーリーとライチは仲が悪かったはずなのに、ゲームの貸し借りなんていつの間にしていたんだろうか。
「とにかくだ。顔を出してくれないと話も出来ないんだ。ライチ」
「う〜〜……わ、分かりましたわ……」
もぞもぞとライチが顔を出してきた。少しだけ顔が赤くなっていて、だるそうな表情をしている。
「は、ハクト様。あまり見ないで頂けませんか……わたくしのはしたない顔をみせたくありませんの……」
「そう言うわけにはいかないさ。お前が魔力切れで倒れている言う事だから、手を貸してくれと会長から頼まれたんだよ」
「お、お姉様が……ま、まさかわたくしと……」
ライチが顔を真っ赤にする。ライチの頭の中ではどうやらあんな事やこんな事を考えているみたいだ。
「あのな……お前が想像しているような事はしないから」
「えっ? そうなのですか……〜〜っ!?」
ついに頭からぼんと煙を出したライチ。
「も、申し訳ありませんでした! わ、わたくし、なんていやらしい想像をなさっているのですか?」
「ああ、会長からそんな説明されたら赤くもなるだろうな。だが、悪いけど、俺のは少しだけ違うんだ」
ハクトはとりあえずライチにハクト流の魔力供給を説明する。異性同士が抱擁する事でお互いの気を洞穴させる。そしてハクトの魔力をライチの身体に中に入れる事でライチの魔力を回復する事が出来るのだ。
「まあ、こんな所だ」
「……それもそれで恥ずかしいですわ」
「言うな。やってきた俺も結構恥ずかしいんだ」
「……やってきたって、ハクト様。それってもうクリスさん達ともやってきたのですか?」
「あっ……」
ハクトがつい口を滑らしてしまった。
「ハクト様……女たらしですわね……」
「言うな……自分もそう思うとめちゃくちゃ恥ずかしいのだから」
ハクトは苦笑いするしかなかった。
「とにかく、ライチも早く良くなりたいのだろう? 恥ずかしいけど、俺も協力するからさ」
「……そ、そうですわよね。わたくしも早く良くなりまして、お姉様のお手伝いをしないといけませんからね」
ライチは包まっていた布団を解いた。
「っ!?」
ライチの姿にハクトは驚いた。薄い赤色のネグリジェだが、かなり透けている為、見えている所が見えてしまっている。
「どうかなさいましたか?」
「ら、ライチ……やっぱりお嬢様って、そう言う服を着ているんだな……」
「えっ?」
ライチは視線を自分の服に向ける。数秒間の間があった後、ライチの顔が真っ赤になっていった。
「あ、ああ、あああああああああああああ〜〜〜!」
ライチも漸く自分の姿に気付いて悲鳴を上げつつ暴れだした。
「お、落ち着け、ライチ!」
「は、ハクト様、見ないで下さい! 今はわたくしのこんなはしたない姿を見せる訳にはいきませんの。このお姿は初夜の時だけですわ!」
「なんかとんでもない発言が出たぞ!? 初夜の時って何だ!? ちょっと未来計画、行き過ぎないか!?」
ハクトは暴れているライチを抑えようとする。そして、ハクトはライチをベッドに押し倒すような形で抑えた。
「は、ハクト様……」
ベッドに押し倒されたライチは、ハクトを見続ける。心臓の鼓動がどんどん速くなっていくのが自分でも分かるぐらい動揺している。
「少しは落ち着いたか?」
「……は、はい……ですが、こんな格好……」
「大丈夫だって。ちゃんと元気にしてあげるから」
ハクトは抑えていた力を抜いていき、肩を掴んでいた両手をそのままゆっくりと動かす。
「んっ……ハクト様……くすぐったい…ですわ……」
少しだけくすぐったくて笑みを零すライチ。ハクトはライチの笑みに頬を赤くする。
「顔が赤いですが……クリスさん達とやった事があるのですから、もう慣れていらっしゃるのではないですか?」
ライチが少しだけつーんと拗ねる様に顔を横に逸らす。
「そ、それはそうだけど……慣れる訳ないだろう。一人の子に何回もすれば慣れるかも知れないけど、他のことなると別なんだよ。同じ事をしたって気持ち良くならないかも知れないだろう。だからライチにもみんなと同じ事をしたって気持ちよくさせられないからさ」
ハクトの手が少しだけ震えているのをライチも気付いた。ハクトがかなり緊張している事が分かった。
「緊張されているのですか?」
「ああ……何度やっても緊張はするよ」
「良かったですわ……ですが、わたくしもかなり恥ずかしいのですけど。せめて服を着替えてもよろしいでしょか?」
ライチが頬を赤くする。しかしハクトは握っているライチの手を放そうとしない。
「は、ハクト様?」
「悪いけど、待っている時間はないから、このまま行くよ」
「あ、あの、ハクト様……ふあっ!?」
ライチの中にハクトの魔力が注ぎこまれていく。ライチは急に自分の中に別の何かが入っていくのを感じて、声を上げて、目を閉じて耐えている。そんな様子を見ていたハクトは思わず呟いた。
「まだ少しだけなのに、感じやすいのだな」
「い、いや……そんなこと…ありませんわ……」
「だけど、ほら」
ハクトは右手だけを離すとライチの肩をそ〜と撫でる。
「ひやっ!? あ、ああっ!」
びくんとライチの身体が跳ねる。
「やっぱり感じやすいんだね、ライチは」
「言わないで下さい……恥ずかしいですわ……んんっ、うっ、ああん」
ハクトがライチの身体を撫で続けると、ライチは声を上げながら身体がびくんびくんとする。ライチの様子にハクトは少しだけ笑みを浮かべる。ライチの反応にハクトの何かが切れた音がした。
「ひやっ、ううん、くっ……は、ハクト様……な、何を……」
「いや、何……ライチの反応が凄く可愛くてな。少しだけ悪戯を」
ハクトはライチの首筋を舐める。ライチは驚いて身体がびくんとなった。
「あ、ああん! は、ハクト様、そんな所、舐めないで下さいませ……ううん」
「そう、だったらこれはどうかな」
ハクトは人差し指でライチの背中をす〜と擦ってあげる。
「ひややっ!?」
「おお、良い反応だな」
「ハクト様!? そういうの止めてくださいませんか!? わ、わたくし……ひやっ、んんっ」
ライチの背中をまた人差し指で擦るハクト。ライチは声を出さない様に必死に堪える。
「これだけ感じているのならもう大丈夫だな」
ハクトはライチの身体を抱き締める様にすると、ハクトは自分の魔力をライチの身体に流していく。
「んっ! ふあっ! あっ、あっ、ああっ!」
ライチは身体の中に入ってくるハクトの魔力に驚き、さっきから痙攣する様に震えている。そんなライチの姿にハクトはニヤニヤと笑っている
「あれ、ライチ。もしかしていったのか?」
「はぁ…はぁ……は、ハクト様……そんな言い方、ダメですわ……」
「なんて言うのか。ライチが可愛い反応してくれるから、つい……」
どうもライチの反応にハクトは抑えられなくなってきている。だからそのままライチに魔力を入れ続けている。
「ああっ、ううん、くっ、あっ……は、ハクト様…は、激しすぎます……」
「ライチ、ライチ……くっ!」
「ハクト様……ハクト様……わ、わたくし、も、もう……」
「ああ、最後にたくさん入れてあげるからな」
ハクトはラストスパートをかける様に、大量の魔力をライチの中に入れていった。
「ああ、ハクト様! ダメ、ダメです! くっ、ああああぁぁぁぁぁ〜〜!」
ライチは身体を反りかえし、ハクトの大量の魔力が身体の中に入っていった。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
ハクトは魔力を送り終えると、抱き締めていたライチの身体を離してベッドに倒れる。
「はぁ…はぁ…はぁ……ハクト様……ありがとうございました……」
その横でライチが感謝の言葉を言った。
「もう身体の方は大丈夫なのか?」
「はい、ハクト様のおかげで元気になりました」
「そうか…それは…良かった……」
ハクトは瞼が重くなってきて、そのまま眠りについた。
「ハクト様、わざわざわたくしの為に来ていただけたばかりか、魔力供給までしてもらうなんて。本当に嬉しいですわ」
ライチは眠っているハクトの寝顔を見て微笑む。今まで自分が一番であったと思っていたあの頃と違って、ハクトやクリス達と一緒にいる様になってから、ライチは自分らしさを見つけ出せる様になった。
「ハクト様、貴方のおかげでわたくしは自分が好きになれてきましたわ。本当にありがとうございます。ハクト様、大好きですわ」
眠っているハクトに向かってそう言ったライチはハクトの頬にキスをした。
(続く)