霊盟摩訶不思議探検会

第六話 

四月十日
 
 今日から普通の授業が始まった。午前中から張り切っている教師達の言葉を右から左へと聞き流していたら、いつの間にか午前の授業が終わっていた。
「時の流れと言うものは、何とも早いものなんだな……」
「浩輔君……さっきの授業、ちゃんと聞いてた?」
 あははは……遙歌よ。さっきまで寝ていた俺が授業を聞いていたとでも思っていたか?
「はい、罰ゲーム!」
 くいっと、どこから垂らしている紐を引っ張ると、俺の頭上に海藤が降ってきた。
「い、いつから、こんなシステムが出来たんだ……」
「学級委員だから」
 そういえば、昨日、部活紹介が終わって、HRの時に学級委員を決める事になったんだよね。それで、遙歌が学級委員に立候補して、副委員は勇輝になった。
「海藤さん、これから浩輔君がサボったりした時はよろしくね」
「……こくっ」
 頭の上にいるから、よく分からないけど頷いて天井に帰ったみたいだ。
「いつの間に海藤と仲良くなったんだ?」
「今日から」
 あぁ、そうですか……
「よっしゃぁぁぁぁ! お昼だぜぇぇぇ!」
 やけにテンションが高い源一郎。
「むしろ、あいつを注意しろ、委員長さ……ん!?」
「えいっ!」
 ぶすっ!
「ぎゃぁぁぁぁぁ! 目が、目がぁぁぁぁ!」
 どこから出したのか、弓を出して矢を放ち、源一郎の両目にクリーンヒットした。ナイスコントロールと言い様が無いな。
「良いか……源一郎だし」
「浩輔、そろそろ購買部に行きませんと」
「おぉ、そうだった」
 基本的に俺達は購買部でお昼を済ませる。学食は混雑しているし、満席状態ではろくにご飯も食べられない。だから、購買部でパン辺りを買って、部室で食べるのが俺達の日常である。
 購買部は西校舎の離れにある食堂の隣にある。四時限目終了のチャイムが購買部競争のスタートの合図だから、既に戦争状態が始まっている。欲しい物を手に入れるために手段を選ばない。
「出遅れたなぁ」
「源一郎の所為ですよ」
 俺達は後ろでピクピクと痙攣している源一郎を見る。さっきまで暴れていたのを縄で縛って、そのまま購買部まで引き摺っていったら、こうなった。
「今更、後悔しても仕方ない。とりあえず、飛び込むか」
「そうですね。では……」
 勇輝が源一郎を引っ張っていた縄を掴んで、力一杯半回転して投げた。名付けて、源一郎ミサイル! ミサイルと化した源一郎が次々と生徒達を吹き飛ばした。その跡を俺達は駆け出して、購買部に近づいて欲しい物を手に入れて脱出。そして、割れていた海の様に戻っていき、また戦争とかした。
 俺が手に入れたのは、最後の一個だったカツサンド。勇輝はおにぎりと菓子パンを手に入れていた。
「何とかなったな」
「さて、部室に行きますか」
 俺達は購買部を後にしようとすると……
「あ……」
「んっ? 未紗?」
 未紗が購買部に来ていた。手には藍色の巾着袋を持っている。
「どうしたんだ?」
「えっと……お兄ちゃんは、ご飯……もう食べた?」
「いや、これから食べようと思っていたけど」
 カツサンドを見せると、未紗はしゅんと俯いた。どうしたんだ? その巾着袋の形からして、弁当であるとみて間違いない。自分用ならいちいち購買部に来る事は無い。
「……まさか、それって……」
 漸く、未紗がここに来た理由が理解した。
「うん、お兄ちゃんの弁当……」
 だと思った。
「でも、どうして急に?」
 今まで、弁当を作ってきた事なんて一度も無かった。なのに、どうして今頃になって……
「作りたかったから……」
「そうか……」
 もしかしたら、未紗はずっと弁当を作りたかったのかもしれない。だけど、俺が高校に入って学生寮にいるから、会う機会があまり無くなって弁当を渡せる事が出来なくなっていた。もしくは恥ずかしくて作れなかったかのどちらかだろう。
「ありがとう、未紗」
 頭を撫でてあげると未紗は顔を赤くして嬉しそうな顔をしている。ネコ耳がぴょんと出てくる。
「仲が良いですね」
「兄妹なんだから良いだろう」
 ニヤニヤと笑っている勇輝を睨む。俺は頭を撫でている手の逆の手でお札を投げる。勇輝の後ろを通り過ぎてその背後霊に貼り付けて霊術を発動させる。
「あばばばっばばばばばぁぁぁ!」
 いつの間に復活していた源一郎はビリビリと痺れている。
「勇輝、背後霊には気を付けておけよ。そう言う類の幽霊は質が悪いから」
「そうですね。全然気配を感じませんでしたから」
 ちなみに未紗には見えない様に視界を遮っていたから、未紗は何が起こっているのか分からないみたいだ。
「大丈夫だよ。未紗を襲おうとした悪い妖怪は退治してあげたから」
 安心させる様に撫で撫でしてあげる。
「にゃぁ〜……♪」
 未紗は嬉しそうに鳴く。やっぱりネコだね。
「それじゃぁ、弁当はありがたく貰っておくよ」
「うん……弁当箱は放課後で良いから」
 未紗から弁当を貰う。
「それじゃぁ、お兄ちゃん……友達が待っているから」
「友達と弁当なのか?」
「うん……早く戻らないと全部無くなっちゃうから……バイバイ、お兄ちゃん」
 手を振ってから、未紗は購買部から立ち去った。
「兄想いだね、未紗ちゃんは」
「やらないからな」
「いえいえ……浩輔がお兄さんじゃないと、多分あそこまでしませんよ。出来の良い妹さんに育てたのは浩輔なんですから」
 まぁ、出来に良い妹であると言うのは認めるよ。実際育てたのは俺だしね。
「さて、未紗から弁当も貰った事だし、早く部室に行ってお昼にしようぜ」
 俺は早く未紗の弁当を食べたくて部室に向かおうとした時、キンコンカンコンと放送が流れた。
『二年B組の〜、浅川浩輔く〜ん、浅川浩輔く〜ん。至急〜、職員室まで来てください〜』
 キンコンカンコンと放送が終わった。俺は呆然とするしかなかった。姉さん……バットタイミングですよ〜。
「あちゃぁ、これは仕方ないですね。早く行かないと、吹雪先生に怒られますよ」
「あぁ……分かっている……」
 最早泣きたくなってきたよ……これでろくな話ではなかったら、即刻逃げるからな。
 俺はそう決意し、職員室へ向かった。
 
「失礼します!」
 バンと職員室のドアを開けた。職員室の中に入って、姉さんを探す。
「こー君、ドアに静かに開けてね〜」
 姉さんは職員室の奥にあるソファーに座っていた。客様が来た時に使う二人掛けソファーである。姉さんの向かう側には、俺の見知っている人が座っていた。白髪に少し皺が出ている顔に、神主さんが着る服を着ている一人の老人だった。
「雅之さん?」
「お久しぶりじゃな……春休みの会合以来じゃな」
 この人は遙歌の祖父で名波神社の神主にして、治安維持会の会長でもある名波雅之さんである。昔は妖怪退治のスペシャリストで、遙歌と同じで全国を回っていた事があるみたいだ。
 雅之さんがここに来て、俺に用事と言う事は……何となく分かった様な気がした。
「……お仕事ですか?」
「うむ、そうじゃ」
 やっぱり、治安維持会の仕事かよ……
「ほら〜、こー君。ちゃんと座って話を聞いてあげなさい〜」
 俺はもう諦めたのか様に姉さんの隣に座った。
「あの、弁当食べながらでは、ダメですか?」
「ダメですよ〜、こー君。人の話を聞いている時に〜、ご飯を食べるなんて〜、失礼ですよ〜」
 ダメ元で訊いてみたけど、やっぱりダメか……まだ、昼飯食べていないのに……でも、仕方ないか……
「ところで、治安維持会の話なら、遙歌が来ていないのですけど……」
「あぁ、孫娘には、今朝話しておる」
 遙歌ぁぁぁ! 仕事があるなら、朝の時に言ってくれぇぇぇ!
「孫娘に当たるな。あの子は意地悪で話さなかったのではなく、話すのを忘れていただけじゃ。相変わらずの可愛いドジッ子じゃのう」
 孫に溺愛過ぎますよ、雅之さん……
「それにしても、吹雪ちゃんも一段と可愛くなったのう」
「どういたしまして〜」
「世間話するなら帰りますよ」
「冗談じゃ、冗談……さて、仕事の話をしようか」
 早く終わらして、俺は飯を食いたいんだ。
「既に、わしらもお前さん達が連続殺人事件に首を突っ込んでおるのは知っている」
 ですよね。遙歌から聞いているんだろう。
「それとはまた違った事件が起こっておる。今度のは少し質が悪くてのう。人の被害も出ておるのじゃ」
「何ですか、それ?」
 そんな話、一度も聞いた事が無いぞ。それを早く言って下さいよ。
「この程度の事件なら警察で大丈夫だと思っていたのじゃ。じゃが、警察でも手を焼いているみたいだから、わしらに頼んできたのじゃ。まったく、最近の警察は弛んでおるのう」
 そこは同感です。
「それで、事件の内容とは?」
「鼠妖怪の仕業じゃ」
「鼠退治ですか!? うわぁ、面倒だなぁ……」
 一番引き受けたくない仕事だ……
「我慢してくれ。お前達も鼠どもに暴れられたら、事件の調査が出来ると思うか?」
「それは出来ないですね……」
 鼠妖怪はかなりしぶとい所がある。だから、面倒くさいんだよ。だが、放っておくよ、後々厄介になるか。
「遙歌は今日から夜の見回りに行くんだろう?」
「おぉ、そうじゃ」
「じゃぁ、俺が断る理由はありませんね。分かりました。自分も鼠妖怪退治の依頼引き受けます」
「流石、浩輔君じゃ。それでこそ吹雪ちゃんの弟君じゃのう」
「いえいえ〜、それ程でもないですよ〜」
 自分が褒められたかの様に喜ぶ姉さん。
「あぁ、でしたら姉さん。二つほどお願いがあるけど、良いかな?」
「何ですの〜?」
「一つ目は、高科を連れて行きたい。あいつはそれなりに戦力になるから必要になる。そして二つ目は、俺と高科に門限が過ぎても、お咎め無しにしてくれるかな?」
 恐らく鼠妖怪の退治には、かなり時間が掛かる。だから、門限が過ぎるかも知れないから、その辺りを抑えておかないと、あいつも協力してくれないかも知れない。
「分かりましたわ〜。寮長さんと管理人さんに言っておきますね〜」
「あっ、それと三つ目。明日学校サボっても良いですか?」
「それはダメですよ〜」
 ちっ……ダメか……
 
 そして、夜の七時。俺達は鼠妖怪達が潜んでいるかも知れない、人間側の商店街に居る。
「と言うわけで、早速調査に向かうぞ」
「お〜!」
 俺の号令に、巫女服姿の遙歌は手を挙げてくれたけど、同じく巫女服姿の高科はそっぽ向いている。
「あれ? どうしたの、かなでさん?」
「……あのね、何で私を巻き込むのよ、あんたは?」
 どうやら、この仕事に勝手に入れられたのが気に入らなかったみたいだな。
「戦力になるのは本当の話。多分、俺と遙歌だけだと、やられるかも知れないからな」
「そうだよね。あれって、Gよりも厳しいんだよね」
 確かに、あの黒い物体より質が悪い。
「お前も知っているだろう。鼠妖怪の事は」
「えぇ、知っているわ。全国のどこにでもいる小妖怪でしょう」
「そして、奴らは必ず集団で行動している。しかも、二、三匹ではなく、その十倍か二十倍だ」
 つまり、最低でも二十匹か三十匹ぐらいいるかも知れないのだ。
「あ、浩輔君! センサーに反応! 鼠妖怪発見だよ!」
 ピコンピコンと遙歌が身につけている勾玉の首飾りが音を出してピカピカと光っている。妖怪センサーと言って、近くに暴走化している妖怪を見つける事が出来るセンサーである。
 お店とお店の間にある路地裏に鼠達がうろちょろしている。ゴミを漁っていたのか、ゴミ箱が倒されている。俺達に気付いたのか、鼠達がこっちに向かってきた。
「来たわね!」
 高科が刀を抜くと鼠を斬ろうとする。
「ちょっと待て! 斬ったら、増えるだろう!」
「っ! しまっ!」
 高科も気付いたがもう遅かった。鼠達を斬ってしまった。すると、斬られた鼠がボンと何匹か増えた。
 こいつらが厄介なのは、斬ったら数が増えると言う事だ。正確には物理攻撃を与えたら数が増えるのだ。だから、刀や矢で攻撃してはいけないのだ。
「霊術で対抗!」
 俺はベストのボタンを外して、内側にあるたくさんのお札を出して投げつけて、霊術で攻撃する。鼠達にお札が貼られていき、次々と消滅していく。
 遙歌や高科も持っているお札を使って、霊術で対抗している。しかし、これではキリが無い。仕方ない……
「遙歌、高科、下がれ! 一気にこいつらを消滅させる!」
 俺は両手にお札を四枚取り出して、鼠達の通り道にお札を投げて貼り付ける。印を切り、鼠達がそこを通ろうとした瞬間、結界を発動させる。結界の中に次々入っていく鼠達が消滅していく。こいつらは頭脳があまり良くないから、通り道に結界があっても、真っ直ぐ進んでしまう習性があるのだ。
 最後の一匹を消滅させると、結界を解除して息を吐いた。
「やれやれ……ここのお掃除は完了と……」
「お疲れ様。でも、まだまだいるんだよね」
 そうだった……商店街だけでかなり根城を作っているみたいだから、それを全部駆除しないといけない。大変だなぁ……
「……ごめん」
 すると、高科が小さく謝った。
「どうした、何故謝る?」
「あいつらは斬ってはいけないと分かっていたのに、つい斬ってしまった……」
 確かに、あれは驚いたぜ。鼠妖怪を斬る退魔巫女さんなんて遙歌と同じだな。
「しかも一瞬で三の太刀までするとは、正直、凄いなぁと思ったよ」
「うんうん、凄い剣捌きだったよ」
 最初鞘から刀を抜いた時に一の太刀をして、その次に縦にニの太刀をして、最後は斜めに三の太刀をする。中々の剣捌きだと俺も認める。
「だけど、これじゃぁ数を増やしてしまうばかり。戦力にならないわ」
「弱音を吐くなんて、お前らしくないな。せっかく妖怪退治の仕事をさせてあげているのに」
「何ですって!? 誰が弱音を吐いたのよ!?」
 今さっきだろう……
「とにかく、最初にも言ったけど、お前は戦力になる。俺と遙歌では、いずれ霊力が無くなってしまうから、お前が頼りになるんだよ」
「でも、刀が使えないんじゃ……」
「安心しろ。ちょっとした裏技を使うのさ」
「裏技?」
「高科、刀と鞘を貸してくれ」
「……何するつもりなの?」
 高科が刀と鞘を渡してくれた。俺は刀を鞘に納めて、そこに何枚かお札を貼り付けて霊力を送り込む。
「……よしっ! これで完了と」
 霊力を送り終えた俺は、そのまま高科に返してあげた。
「高科、この状態で鼠達を叩いていけ」
「はぁ!? これで、大丈夫なの!?」
「大丈夫だって、物は試し。まぁ、騙されたと思ってやってみろ。丁度、新手の鼠達の登場みたいだし」
 そう言って、新手の鼠妖怪達を指す。高科は渋々やってみる事にした。高科に飛び掛ってくる鼠達に狙いをつけて、野球のバットの如く振って、鼠達を打った。すると、鼠達はそのまま消滅した。
「えぇっ!? 倒した!?」
 やった高科は驚いている。
「高科、次!」
 驚いていた高科は我に返って、次々と鼠達をホームランしていく。そして、あっという間に全部撃破してくれた。
「ちょっとあんた!? 一体、私の刀に何をしたの!?」
 高科が戻ってきて、説明を求めてきた。後ろにいた遙歌も興味津々みたいだ。
「簡単な事だ。鼠妖怪の苦手なものをお札に籠めていて、それをぶつけているから消滅しているのだよ」
「鼠妖怪の苦手なものって?」
「まさか、チーズ?」
「高科、正解」
 鼠妖怪の弱点であるチーズをお札に染み込ませて、それを高科の鞘に貼り付けているのだ。一見チーズは鼠の好物だと思われているけど、それは妖怪じゃない普通の動物の時だけであって、逆に妖怪となっている鼠はチーズを苦手にしているのだ。
「何と言う裏技……」
「もっとも、それが効くのは雑魚だけだ。この集団のボスには効かないだろうな」
 ボスまで効いてしまっては、反則以外の何物でも無いからな。
「でも、そろそろボスが出てきても、良い様な気がするんだよね」
「甘いぞ、遙歌。ゲームだと、もうじき中ボス級の奴が現れるはずだ」
 これだけ雑魚を倒したんだ。もうそろそろ中ボスが出て来ても良いはずなんだけど……
「「ちゅっちゅっちゅっ……」」
 辺りから鼠の声が聞こえた。すると、正面から二匹の鼠が現れた。さっきまでの雑魚とは違って、二足歩行に白と赤のTシャツに黒の短パンを履いている。
「ちゅちゅちゅ〜!」
「ちゅちゅっちゅ!」
 鼠達が何か俺達に言っているみたいだ。
「浩輔君、通訳お願い」
「えぇと、最初は『我ら、鼠兄弟!』と言って、その次が『マウスブラザーズ!』と言っていたよ」
「そのままじゃない……」
 高科、そこはつっこんであげるな……
「ちゅちゅ〜ちゅ〜!」
「よくも俺達の手下をやってくれたな…と申しております」
「ちゅちゅちゅ〜ちゅちゅちゅっちゅ〜!」
「俺達兄弟が相手になってやる…と申しております」
 どうやら、今度はこいつらが相手か……
「ちゅちゅ〜!」『行くぜ、弟よ!』
「ちゅ〜!」『分かったよ、兄さん!』
「あぁ、もう! ちゅ〜ちゅ〜とうるさいのよ!」
 高科がついにキレて、鼠兄弟の一匹をさっきまでの様に鞘でカキーンとホームランしちゃった。
「ちゅ〜!」『弟よ〜!』
「ちゅ〜!」『兄さ〜ん!』
 キラーンと弟の方が星になってしまった。それにしても、よく飛んだなぁ。メジャーリーグもビックリだぜ。
「容赦ないな、お前は……」
「別に良いでしょう。こいつらは妖怪なんだから退治しなきゃ」
 いや、それはそうだけどさ……こいつらがどんな事をするのか見てみたかったのだけど……
「さて、残るのはあんただけになったわね」
 鞘で構える高科。それに怯えている鼠兄弟の兄。
「待って、かなでさん。その鼠さんにボスの居場所を訊いた方が良いと思うよ」
 確かに、こいつからボスのいる所まで案内してくれたらラッキーだよね。遙歌的に無駄な殺生はしたくないだけだと思うけど。
「……そうね。訊いてから始末した方が良いのね」
 違うからな……
「それで、お前達のボスはどこにいるのか教えてくれないか?」
「ちゅちゅちゅ……」
「教えてほしければ……」
「ちゅ〜ちゅちゅ〜♪」
「……お前のパンツを見せろ」
 俺は高科にそう伝えてあげた。
「ちゅっ!?」『えっ!?』
「ほぉ………」
 ゴゴゴと燃えている高科。鼠兄弟の兄は首をフルフルと横に振っている。
「浩輔君、本当なの?」
「俺は鼠の通訳をしただけだ」
 実際は『教えるかよ、バ〜カ♪』と言っていたから、少しムカついたので嘘を言ったのだ。
「このスケベ鼠が!?」
 高科がまたしてもバットの構えになって振ろうとする。しかし、鼠兄弟の兄は震えていたのが、ニヤリと顔が笑っている。まさか、奴の狙いはここからの離脱!?
「高科! 上から叩きつけろ!」
「っ! えぇ!」
 俺の指示に従って、高科はワザと空振りをして、振った勢いで上に上げて、そのまま鼠兄弟の兄の頭を叩きつけた。咄嗟の事で対応出来なかったのでクリティカルヒットして気絶した。
「あちゃぁ〜、気絶させてどうする?」
「し、仕方なかったじゃない! あの状態で加減なんて出来なかったのよ! だいたい、あんたが嘘を言うからでしょう!?」
 さぁてね。俺は知らないね。
「まぁ、とりあえず捕まえておこう。起きたら話が出来る様に縄で縛っておいてさ」
 遙歌がそう言うと、袖から縄を取り出した。それもそうだな。逃げない様に縛っておいた方が良いか。
「高科、俺がこいつを押さえるから縄で縛ってくれないか?」
「……分かったわよ」
 渋々了解してくれた高科。俺は気絶している鼠兄弟の兄を押さえて、高科が触れない様に体をグルグルと縛っていく。それを見ているだけの遙歌。
「ふ〜、これでボスの居場所が……えっ? きゃぁぁぁぁ!」
 すると、遙歌の周りに四匹の鼠妖怪が現れて、遙歌を羽交い絞めする。
「遙歌!?」
 俺と高科が気付いた時には、遙歌はそのまま鼠達に連れて行かれている。
「あ〜れ〜……た〜す〜け〜て〜……」
「……」
 連れて行かれていく遙歌に、俺は呆然とするしかなかった。
「ちょっと!? 遙歌、連れて行かれているじゃないの!? 追いかけないの!?」
 高科が今にも追いかけようとする。
「待て、高科。まだ追わなくて良い」
「何言っているのよ!? 遙歌を放っておいて良いって言うの!? 何でそんな冷静なのよ、あんたは!?」
 あれぇ? 高科ならもう気付いていると思ったのに、何で気付いていないんだ。あぁ、多分遙歌が鼠達に連れて行かれていく所を見て、動転しているみたいだな。
「落ち着けって……これも作戦」
「作戦?」
「そうだ。だいたい、遙歌のあの大根芝居に何故気付かない?」
 最後の遙歌のセリフ。完全に棒読みだったし、芝居だと絶対にバレると思ったぞ。もっとも、鼠妖怪はいくら二足歩行が出来ても、知能は変わらないから、あれが芝居だと気付いていなかったみたいだけど、まさか高科まで騙せたとは……
「そ、そうだったの……」
 今にして思えば、かなり恥ずかしかったのだろうな。高科の顔が少し赤くなっている。
「まぁ、それだけ遙歌の事を心配してくれたのは感謝するよ。でも、あいつなら大丈夫だって。伊達にあいつも退魔巫女をやっているわけではないからさ」
「そ、それで……遙歌は囮なんだよね」
「そうだ。恐らく奴らの行き先はボスの所だ」
「どうやって行くつもりなの?」
「俺がそこまで考えていないと思っているのか。これだよ」
 俺は携帯を開いてマップを開くと、一つ点滅している所がある。
「実はあいつが持っていた妖怪センサー。発信機も付いているから、これで追えるだろう」
「用意周到なんだね……」
「細かい所は気にするな。だが、のんびりもしていられない。急ぐぞ」
 俺達は急いで遙歌が連れ去られた方向に向かった。
 
(遙歌視点)
 浩輔君の作戦で、鼠妖怪の根城に連れて行かれた私は、縄で腕を後ろで縛られて、そのままボスの所まで連れ出された。ここは町の北東にある建築中の工事現場である。木材がたくさん積んである所に、一人の男が座っていた。月が隠れていてあまり見えないけど、白髪に赤い目、ラフなワイシャツに長ズボンを履いている。一見、普通の人間に見えるかもしれないけど、あの異様な態度に妖怪の匂い。間違いなくこいつが鼠妖怪集団のボスね。
「ちゅちゅちゅ〜」
 私を連れてきた鼠が何か言っているけど、通訳してくれる浩輔君がいないから、何言っているのか分からないよ。
「ほぉ、これはまた可愛いメスだね。しかも巫女さんとは……」
 ボスがニヤリと笑った。どうやら、人語の出来る鼠という事か。これなら、話し合いで何とかなるかも知れない。
「貴方、外から来た妖怪ですか?」
 私が質問すると、ボスが立ち上がって、私に近づいてきた。立つとかなり背が高いね。浩輔君以上あるかも……
 ボスが私の目線が合う様に座る。そして、マジマジと私を見る。
「珍しいね。俺の前で震えないメスだなんて、ますます好みだ」
 ボスが私の顔を手で触ってくる。人間の姿をしていても、やはり鼠の毛が少し出ていて、ジョリジョリする。
「貴方が鼠妖怪のボス?」
「そうだ。鼠妖怪集団『窮鼠団』ボスの増田厨子だ。それで、君はなんて名前だい、子猫ちゃん?」
 子猫ちゃん呼ばわりって……ネコはみーちゃんだけで十分だよ……と、そんな事を考えている場合じゃなかった。浩輔君達が来るまで、時間を稼がないと……
「…名波神社の退魔巫女、名波遙歌です」
「遙歌ちゃんか……可愛い名前だね」
 こんな奴に可愛いと呼ばれても嬉しくないよ。
「貴方に効きたい事があるのですけど、訊いて良いですか?」
「そうだね。俺と交わった後では、訊こうにも訊けないかも知れないからね」
 交わるって……まさか……でも、この状況じゃ、考えられる答えは一つしかない。しかも、最初に言っていた事から、こいつらは何回も女性とやってきたに違いない。こんな奴に、私の初めてをあげる訳にはいかない。
「貴方の目的は何ですか? どうして、この町に来たのですか?」
「目的ね……そうだね。少しこの町を攻めてみたかったと言うぐらいですかね」
 攻めるって、宣戦布告!?
「我ら、鼠妖怪集団の全国制覇のために、まずはこの町を攻めて、他の妖怪の町に恐怖を与えてやろうと思っていたんだ。そしたら、協力してくれるバックが付いたから、攻めてみようかなと思ってね」
 協力してくれている者がいると言うの……厄介だね。
「しかし、この町は何とも素晴らしいではないか。霊脈も凄いし、こんな可愛い巫女さんもいる」
 霊脈の事を知っているなんて……
 ちなみに霊脈とは、龍脈とも呼ばれていて、大地に流れている力の脈で、私達霊術が使える巫女等はそこから力を借りている。逆にその霊脈に妖気を蓄えてしまったら、妖怪が強くなって、暴走化しやすくなってしまう。この町に霊脈の源があるのは七つあって、その内の一つは私の神社にある。それを狙っているという事に加えて、この町を襲うという事は、既に狂っている証拠。話し合いで解決は出来ないみたいですね。
 私はシュルシュルと縛られていた縄を解いていき、増田から離れた。
「何っ!? 貴様、いつの間に縄を!?」
「残念だけど、あの程度の縄で縛っても、簡単に抜けられるのよ」
 縄抜けは、浩輔君のお師匠様から教えてもらった技である。
「ごめんなさいね。貴方と交わるつもりは無いですから……じゃぁ、一気に行くわよ! 浩輔君! かなでさん!」
 私がそう叫ぶと、上から二人が降りてきた。
 
(浩輔視点)
 遙歌の合図で、先に来ていて待っていた俺と高科はそこから下に飛び降りて、遙歌達の間に着地した。俺はお札を一枚上に投げると霊術を発動させる。
「神符陰陽宝珠!」
 お札から無数の陰陽玉が出てきて、鼠達を次々と吹き飛ばして気絶させた。
 高科は鼠妖怪達を次々と叩き潰して消滅させる。遙歌は霊術で鼠妖怪を逃がさないようにしている。
 そして、動ける鼠妖怪はボスだけになった。
「な、何なんだよ、こいつら……は、話が違い過ぎる………」
 何かを呟いているみたいだけど、そんなの関係ない。
「鼠妖怪集団『窮鼠団』。お前達は霊盟町治安規律に反した。よって、治安維持会の名の下に、お前達を暴走化と認定され、これより抹殺する」
 話は聞かせてもらった。この町を攻めるという時点でアウトだったけど、何より、遙歌と交わろうとした時点で、少しムカッと来ているんだよ。
「高科、奴には遠慮するな!」
「分かっているわよ!」
 高科は鞘から刀を抜いて、霊力を籠めて増田厨子に斬りつけた。体を斬られた増田厨子はよろける様に後ろに下がっていくが、急に笑い出した。
「ふふふふ……ふはははははは! 全然効きませんでした!」
「何っ!?」
「かなでさんの攻撃が効いていない!?」
 それには俺達も驚いている。斬った本人も何がどうなっているのかと呆然としている。
「ど、どうして……?」
「どうだ? 希望から絶望へと変わった瞬間は? 良い表情しているよ」
 奴の体には傷は出ているけど血が流れていない。つまりダメージは喰らっていない事になっている。いくら妖怪でも、そんな事は出来ない。何かからくりがあるはずだ。落ち着いて相手をしっかり見るんだ。
「だったら、これで!」
 高科は袖からお札を出して、増田厨子に向かって投げつけて、霊術を発動させる。
「雷神滅殺陣!」
 札から雷撃を放った。増田厨子はそれを避ける事無く雷撃を喰らった。しかし、その表情に苦しみが無かった。まさか、滅殺術も効いていないというのか。それはありえない。いくらなんでも滅殺術が効かない妖怪なんていないはずだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……くっ!」
 高科の腰が砕けた。滅殺術を使ってしまったから、高科の霊力が尽きかけている。
「そうだな。まずは、この女から頂こうか」
 増田厨子が高科に近づいて、右手を突き出す。すると、突き出した手に矢が刺さった。
「かなでさんには指一本触らせない。浩輔君!」
 遙歌が矢を構える。その間に俺は高科の腕を引っ張って、遙歌のいる所まで下がった。放心状態の高科はまるで人形の様に軽かった。
「ほぉ、まだ歯向かうのですか? 俺に霊術は効かないのを見ていたのに」
「いいえ、貴方はちゃんとダメージを喰らっています。ただ、痛みを感じないだけです」
「痛みを感じないって……」
 そうか。遙歌の言いたい事が分かったぞ。つまり、奴には何か特殊な制御装置を身に付けていて、それで痛覚を無くしているだけなんだ。それと同時に霊力耐性も付いていて、霊術が効かなかったと言う事か。
「つまり、その制御装置を見つけて壊せば、貴方は地獄の様な苦痛が来ると言う事よ」
「ふふふ……それがどうしたと言う事だ? まだ、それを見つけていないみたいじゃないか」
 確かにまだ見つかっていない。だけど、ダメージを与えていると言う事に間違いは無い。
「立て、高科!」
 俺は高科の肩を揺すると、漸く意識を取り戻した。
「迷わなくて良い。手加減無しで斬り続けろ。その間に、俺が奴の弱点を見つける」
 俺は高科の刀を渡してあげた。
「あ、ありがとう……」
「遙歌。高科に霊力を回復させろ。それは……お前の仕事だろう」
 一瞬躊躇ったけど、高科の霊力を回復させるには、この方法しかない。だから、その役目を遙歌に託した。遙歌も高科も、それが理解したのか顔が少し赤くなった。
「わ、分かった……かなでさん、失礼するよ」
「うん、ごめん。お願い……」
 遙歌は高科と目線が合う様に座って、一度深呼吸してから高科と唇を合わせた。
 キスをする事で霊力を回復させる事が出来るのだ。もっとも、同性同士でやるより異性同士でやった方が霊力の回復は早いけど、流石に俺がやるわけにはいかないだろう。
「んっ……ふ〜……」
 遙歌が合わせていた唇を離す。遙歌も高科も顔がさっきより真っ赤になっている。まぁ、こんな事、二人ともあまりやった事が無いのだろうからな。
「あっ……力が……」
 高科の霊力が回復してきたのだろう。霊力が戻ってきているみたいだ。
「ありがとう、遙歌。これで、また戦えるわ」
「頑張ってね、かなでさん」
「……あんたにも感謝するわ、浅川」
「お? おぉ……」
 高科が初めて俺の名前を呼んでくれた。少しだけ嬉しくなった。
「それで、手加減無用だったんだよね。行くわよ!」
 高科が増田厨子に突っ込んで行き、刀で突いた。
「ふふふ……何度やっても無駄だと何故分からない? 俺には貴様の刀など痛くも無いわ」
 増田厨子が高科に腕を掴んだ。
「このまま、俺ともキスをしようではないか」
「くっ!」
「俺がいる事を忘れるな! 波動霊光弾!」
 増田厨子の懐に入って、波動霊光弾を放った。掴んでいた手を離して、増田厨子は吹き飛ばされた。
「大丈夫か?」
「えぇ……でも、まだみたいよ」
 増田厨子が吹き飛ばされた方向から、奴は起き上がってきた。
「やってくれるじゃないか、貴様。こうなったら、俺様の本来の姿を見せてやる!」
 そう言って、増田厨子は力を籠め始めた。すると、人間の姿から、大きな鼠の姿に変わった。
「絶望しろ、人間ども!」
 増田厨子が右腕を振り落としてきた。俺と高科はそれを左右に避けると、俺は右に、高科は左に分かれた。
「でかくなるのは良いけど、その分、的もでかくなっているんだぜ」
 俺は霊力を籠めた拳をぶつけ続けていく。反対の高科も刀で斬り続けている。
「ぐっ! 貴様らぁぁ!」
「見つけた! ここね!」
 すると、遙歌は狙いをつけて、矢を放った。狙ったのは、増田厨子の額にある紅い宝玉みたいな所に刺さった。そして、パリンと宝玉が割れた。
「うっ! ぐわぁぁぁぁぁぁ! な、何だ、この痛みはぁぁぁぁぁ!?」
 どうやら、制御装置が壊れて今まで喰らったダメージが来たのだろう。痛みに苦しむ増田厨子に、高科がトドメを刺そうとしている。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
 最早、勝機を失った増田厨子はその場から逃げようとする。すると、増田厨子の足元に何か結界の方陣が出現して、相手を拘束させた。これって、拘束系の結界陣!? じゃぁ、これって、例の事件と同じ……
「これで、終わりよ!」
 だが、それに気付いていない高科は刀を振り上げて、増田厨子を斬ろうとしている。動けなくなった相手と勘違いして、絶好の好機だと思っている。
「くそっ! 間に合え! 封印霊方陣!」
 俺は地面に札を貼って霊術を発動させる。すると、増田厨子の足元にあった結界の方陣が消えた。その拍子に腰が抜けたかの様に尻餅をついたから、高科の攻撃が空振りした。
「ちょっと! どうして邪魔するのよ!? こいつは殺して良いのでしょう!?」
「少し待て! こいつから色々情報貰う必要がある!」
 そう、こいつが急にここを攻めようとしたのは、協力者がいたからだ。その協力者が何者なのかを訊くべきだ。
 すると、増田厨子の体が光り出した。何をするつもりだ?
「な、何だ、この光は? ぐ、ぐわぁぁぁぁぁ!」
 光に包まれた増田厨子は、そのまま消えてしまった。周りにいた鼠妖怪達はボスがいなくなってしまった事で、自分達ではどうする事も出来ないと考え、この場から逃げていった。
「……これで、終わったみたいだね」
「あぁ、そうだな。あいつの妖力はもう完全に消えている。取り逃がしたと言うより、奴の言っていた協力者が強制的に戻したのかも知れない」
 だが、それをしたにしても霊力を感じなかったと言う事は、町の外にいるって事だ。奴の言っていた協力者とは一体何者なんだ。だが、そいつは間違いなく、例の連続殺人事件と関係しているかも知れない。
 
「はぁ、はぁ、はぁ……ぐっ、ぐわぁぁぁ!」
 増田厨子は霊盟町より少し離れた森の中に現れて、痛みに苦しんでいる。
「まだ生きていましたか? 実に残念ですね」
 すると、一本の木の後ろから男の声がした何者かが現れた。顔は月の影で見えなくなっている。
「き、貴様……話が違うではないか!? あの町にあんな強い退魔巫女や退魔霊術師がいるなんて聞いてなかったぞ!」
「えぇ、私もそんな事、貴方に話していませんでしたから……」
 くすくすと笑うと、増田厨子の堪忍袋の緒が切れた。
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
 増田厨子が男に襲いかかろうとした。爪で引き裂こうと腕を上げて、下ろそうとしたら、途中で止まった。いや、止まったというより、何かに絡めとられて動けなくなったのだ。
「な、何だ!? 体が……う、動けない……」
「やれやれ、もう少しだったのですが……あの退魔霊術師、私の結界に気付いてすぐに破るとは、なかなか良い目を持っていますね」
 男は指を動かすと、振り上げていた腕が切断された。増田厨子は断末魔を上げる。
「貴方があのまま、あの退魔巫女に殺されていたら、完成していたのに……もう貴方には用済みです」
 またしても指を動かすと、今度は両足が切断されて、体が地面に倒れた。
「さて、どうしようか……このまま、こいつをあの場所に送っても、奴らに気付かれてしまうな……また別の計画を考えるか」
 男があれこれ考えていると、増田厨子が動き出した。残った腕で這いずりながら男に近づいた。
「き、貴様……喰らってやる!」
 大きく口を開いて、男を飲み込もうとした。しかし、男は指を動かしたら、首を切断されて頭は宙にぶら下がった。
「まったく……いい加減にして下さいね。良い贄になってくれると思ったのですけど……もう良いです。死んで下さい」
 男は息を吐いてから、指をパチンと鳴らした。すると、増田厨子の頭はバラバラに切断された。
「……彼らには私の計画のために動いてもらわないとね」
 男がその場から立ち去ると、増田厨子の残った体が燃え出した。浄化の炎で消滅させられたのだ。
 
 
 
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遙歌「読んでくれました皆さん、はじめまして。『霊盟摩訶不思議探検会、後書きコーナー(仮)』のパーソナリティーの名波遙歌です」
かなで「高科かなでです」
遙歌「さて、ついに黒幕っぽいキャラが登場してきましたね。一体何者なんでしょうか?」
かなで「どうだろうね。結界やらなにやら使えるという事は、私達と同じ霊術師と言う事になるのかな」
遙歌「でも、あの程度なら上級の妖怪でも出来ると思うよ。または半妖の霊術師とかね」
かなで「まだまだ謎が多いって事ね……」
遙歌「いずれ必ず現れるから、その時に正体を暴きましょう。さて、次回なんですけど、何でも私とかなでちゃんの女の戦いとかどうとか書いてあるのだけど、一体何なんでしょうか?」
かなで「さぁ? 私も詳しく聞いていないわ。何なのかしら?」
遙歌「それは次回で明らかになります。それでは、今回はここまで」
かなで「また次回でお会いしましょう」
 
 
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