霊盟摩訶不思議探検会

第十二話  

 
 四月十五日
 
「霊盟剣……解!」
 霊盟剣の力を解放すると、一気に霊力が吸い取られていく感じがした。そして、霊盟剣の刀身が光り出した。
「す、凄い……」
 この場にいる誰もが、霊盟剣の光に見とれている。だが、若本が我に返った。
「だが、そんな剣で何が出来ると言うのだ。もうすぐ、六亡星滅殺方陣が発動する。そうなれば、何もかもおしまいだ」
「それはどうかな、若本。こいつの力は、これからなんだよ」
 俺は霊盟剣を思いっきり地面に刺した。
「何だ、それは? 自棄になって地面に刺したのか?」
「そんなわけないだろう。言ったはずだぜ。俺の狙いは六亡星滅殺方陣だって」
「何だと!? しかし、どうやって!?」
「簡単さ。六亡星滅殺方陣の源になっている、ここの霊脈を元に戻すのさ!」
 六亡星滅殺方陣に使っている霊脈を、俺の霊力で元に戻せば、六亡星滅殺方陣の力は失い、破壊する事が出来る。幸い、霊脈はこの工場の真下にある。
 若本も漸く俺のやっている事に気付いたのか、蜘蛛の糸を使って止めさせようとしている。しかし、俺の周りは、今は霊盟剣の力で守ってくれている。だから、どんな攻撃も俺には届かない。
「届けぇぇぇぇ〜!」
 霊盟剣の力でこの下にある霊脈に当てる。
 
「うおっ!? びっくりした!」
「な、何でしょうか?」
 下にいた源一郎と勇輝は上から下りてきた光に驚いた。操られている妖怪達も、その光を見ると、バタリと倒れていく。
「何だろう……この光は? さっきの地震の所為でしょうか?」
「いや、それとは違う。これは、コウの霊力だ」
 先程の地震で起きた妙な力とは違って、この光から来る力は純粋な光であると感じた。
 
「これが、浅川の霊力……」
 階段で倒れかけていた高科は、遠くから感じる霊力を感じて呟いた。さっきまで六亡星滅殺方陣の力に苦しんでいたけど、急に苦しみがなくなった。
「ここの霊脈が変わっていく。淀んだ力が、清らかに戻っていく」
 高科もここの霊脈はおかしいと感じていたけど、それがどんどん変わっていく事に驚いている。
「本当に凄いわ、浅川は……本当に人間なのかしら?」
 少しだけ笑みを浮かべて、またゆっくりと体を休める。
 
 妖怪側にある大きな屋敷の縁側で正座している吹雪と勘吉は、浩輔の霊力を遠くから感じている。
「なるほど……お前の言うとおり、霊盟剣を使いこなせたと言う事か」
「はい〜、そのとおりです〜」
 今回、浩輔が霊盟剣を貸してくれと言った事を浅川頭首である勘吉に報告していた吹雪だったが、浩輔なら決して昔の様な事は起こさないと言ったのだ。
「浅川の痴れ者だと思っていたが、ここまで成長していたとは、思わなかったのう」
「こー君は〜、昔と違って生き生きとしていますわ〜。だから〜、もう許してあげてもらえますか〜?」
「……どうじゃろうな。じゃが、あやつには、もっと成長してもらいたいものじゃ。わしの…いや、浅川家のためにも」
 勘吉の心の中では、浩輔を認めているのだが、やはり人間である以上、表では敵同士にならないといけない。でなければ、浩輔は成長しないと思っている勘吉は、そろそろ許してあげようとも考えている。
「こー君は〜、ここに住む気はないと思いますけど〜、きっとお爺様の事は〜、許してくれますわ〜」
「……甘い奴め」
 フンと突っ撥ねる勘吉だが、吹雪にはもうバレているのか、くすくすと笑われている。
 
 霊盟剣の力で真下にある霊脈に届いた。あとはこの淀んだ霊脈を清めていかないと……
 しかし、流石に莫大な力を持つ霊脈であって、とても元に戻す事が出来ない。このままじゃ、こっちの霊力が持たない。だが、ここで失敗したら、もう終わりだ。絶対に失敗するわけにはいかないのだ。この町に住んでいる人達の為にも、そして、ここにいる遙歌や高科の為にも……
「はぁぁぁぁぁぁぁ〜!」
 さらに力を使うと、霊脈が変化していく。淀んだ力が徐々になくなっていき、清らかな力となって流れていく。そして、六亡星滅殺方陣の力が失っていくのが分かった。
「ば、バカな!? 何故だ!? 私が何ヶ月も懸けて作った計画が!」
 消えていく事に気付いた若本は、崩れていく六亡星滅殺方陣に自分の妖力を加えようとする。しかし、霊脈が完全に正常に戻ってしまうと、もう若本の力でもどうする事も出来ないのだ。
 そして、ついに町に感じた六亡星滅殺方陣の力が完全に消滅した。それを確認した俺は霊力を止めて、ゆっくりと霊盟剣を抜いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……何とかなったか……」
 流石に霊力をかなり消耗してしまったから、かなり疲れたぜ。
「浩輔君、やったね……」
「凄いよ、お兄ちゃん」
 結界の中にいる遙歌と未紗は、お互い手を取り合って喜んでいる。
「そんな……そんな、バカな……」
 若本は腰が抜けたかの様に座り込んだ。俺はゆっくりと若本に近付いていく。
「若本……お前も気付いているはずだ。本当はこんな事なんてしたくなかったのだろう」
「何だと……?」
「お前は、荒和魂村を自らの手で葬った時、涙を流していた。それって、本当は人間の事が大好きだからじゃないのか。だから、流していたんじゃないのか?」
 荒和魂村で人間と妖怪が共存して暮らしている時の若本の姿は、本当に嬉しそうな顔をしていた。しかし、ちょっとしたすれ違いみたいな事が起きて、人間と妖怪とに亀裂が生じた時も、本当に争うを止めていた。そして、牢屋に閉じ込められていても、最後の理性があった時まで、人間を信じていた。
 だが、運命はお前を残酷な方へ導いてしまった。それをお前は認めてしまった。
「お前は最初から悪ではなかった。だが、ちょっとした運命がお前を狂わせてしまっただけなんだ。狂った歯車を自分ではもう止められない。だから、俺達に託したんだろう。自分の歯車を止めてくれる奴を……」
「……ふふふ……ふはははは〜! あははははは〜!」
 若本が大笑いする。何がおかしいんだ?
「この私が人間にそう言われるとは思わなかった……何故、お前はそこまであの村の事を知っている」
「さぁな。ただ、ちょっと夢で、あの村の顛末を見たからな。だからお前の事を知ったよ」
 誰の仕業なのかは知らないけど……
「そうか……浅川浩輔、やはり、お前は私の邪魔をする人間だ。もう誰にも頼らない。この私自らお前を殺してやる!」
 急に若本の妖気が強くなって襲い掛かってきた。俺はそれを避けて間合いを取った。
「お前!? 俺が邪魔って、どう言う事だ!?」
「死に行く者に答える義理はない!」
 若本は蜘蛛の糸を使って、俺の首や右手を絡めて、締めてくる。このままじゃぁ、絞め殺される……
「……やられてたまるか……くっ……」
 俺は左手で霊力を纏わせて、蜘蛛の糸を切った。切り離されて、ケホッ、ケホッと咳き込む。
「やるな……ならば!」
 若本の執拗とする蜘蛛の糸の攻撃を、何とか避けていくけど、こっちは霊力が殆ど無い状態だから、避けるのも精一杯だ。
「避けきるか。ならば、これで終わりにしてやる」
 若本はパイプイスの近くに立ててあった刀を持ち、鞘を抜いた。刀身が黒く染まっている刃からは物凄い妖気を感じる。
「それは妖刀か!?」
「そうだ。妖刀『破戒鬼』。この妖刀は、妖力や霊力を喰らう刀。それがどう言う事か分かるか?」
 若本は破戒鬼を振り下ろす。それを避けようとするけど、刀身に少し触れてしまう。すると、急に力が抜けてしまった。まるで、中から何かを奪われたかの様に………
 まさか、あの刀身に触れると霊力を吸い取られると言う事か。
「分かったか? この刀に触れると、お前の霊力を喰らっていき、やがて霊力が全て無くなるのだ。お前も霊力が完全になくなるとどうなるか、分かっているはずだ」
 あぁ、分かっている。霊力の自然回復出来るのは霊力がほんの少しでもあれば、霊脈から蓄える事が出来る。しかし、霊力が全く無いとそれが出来なくなる。だから、霊術師にとって、霊力の損失はあまりにも危険な事である。
「理解出来たようだな。ならば、死んでもらうぞ」
 破戒鬼で攻撃してくる。避けるしかないが、やはり妖力で身体能力を上げてきた若本の方が、動きが速くなってきた。
「マズイな……どうしたら……」
 破戒鬼が襲い掛かってくる。咄嗟に霊盟剣で受け止めるが、逆に霊力を奪われ出した。
「くっ……力が……」
やはり、受け止める事も出来ないのか。
「普通の刀なら、少しはマシだったけど、その霊剣が仇となったな。その霊剣は霊力を与えないと刀身が出てこないのだろう。ならば、お前の霊力がなくなれば、その霊剣はもう使い物にはならないな」
 確かに、若本の言うとおりだ。このまま霊盟剣で受け続けても、こっちの霊力が尽きるだけだ。そうなってしまっては、もうどうする事も出来ない。
「浩輔君! 私をここから出して! 私が戦うから!」
 遙歌がドンドンと結界の壁を叩いている。確かに、万全な遙歌なら、何とかなると思う。
「仕方ないか……」
 俺は結界を解除して、遙歌達を外に出した。すると、遙歌は瞬時に弓を構えて、若本に向かって矢を放った。若本はそれを避けず、破戒鬼で矢を斬った。
「浩輔君! 私が相手している間、少しでも良いですから、霊力を回復しておいて下さい!」
「あぁ、俺はしばらく、下がらせてもらう」
 遙歌が俺の前に立って、若本に矢を向ける。俺はその間に後ろに下がる。
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
 未紗が俺の後ろにしがみついた。
「あぁ、遙歌のおかげで、今は休憩取る事が出来た。だが、遙歌じゃぁ、あいつには勝てない。俺が回復するまでの時間を稼いでくれれば良いけど……未紗?」
 未紗の体が震えているのに気付いた。どこか痛い所でもあるのだろうかと思ったけど、未紗の目から涙が零れている。
「どうしたんだ、未紗? どこか痛い所でもあるのか?」
「ううん、違うの?」
「なら、どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、私……お兄ちゃんに酷い事した……今も、お兄ちゃんに迷惑をかけた……私は、悪い子? パパやママみたいに捨てるの?」
 あぁ、そう言う事か……前に未紗は俺に攻撃してきたり、連れ去られたりして、俺がこんな酷い怪我をしている事に、責任を感じているのか。
 でも……俺はお前の本当に父親や母親の様に、お前を捨てたりするものか。
「安心しろって……未紗は悪い子じゃないし、捨てたりしないよ。兄として、妹を守るのは当然じゃないか。お前は、俺の妹なんだから」
「……うん。私は、お兄ちゃんの妹だよね……」
「あぁ……」
 頭を撫でてあげると、漸く泣き止んでくれた。
 さて、遙歌の方はどうなっている?
「はぁ!」
 遙歌は若本に向けて矢を放つが、若本は相変わらず避けずに破戒鬼で斬っている。しかし、その矢を斬った瞬間、矢自身が爆発した。
 今のは爆炎のお札を括りつけて、矢を放ったのだろう。若本がこちらの攻撃を避けずに斬っていくと判断して、こういった仕掛けを用意したとは、流石だな。
「さて、今ので少しはダメージを与えてくれれば良いけど……」
 矢束に入っている矢の数が少なくなっている。遙歌も、もう無駄に矢を射る事が出来ない。弓を持っている手とは逆の手で、お札を取り出して構える。
 爆煙が晴れてくると、若本は立っていた。しかも、全くダメージを喰らっている様には見えなかった。
「ダメだな……お前じゃぁ、力不足だ!」
 若本は破戒鬼を振り下ろすと黒い衝撃波が遙歌に襲い掛かってきた。遙歌は何とかそれを避けるけど、遙歌の後ろの柱が、斜めに切れて壊れた。なんて破壊力だ。あんなのまともに喰らったら、真っ二つじゃないか。
「…あれ? あの人は?」
 キョロキョロと相手を見失った遙歌は見渡す。
「遙歌、上だ!」
 若本はさっきの衝撃波を放った時、高く飛んで遙歌の真上にいたのだ。そして、今は遙歌に向かって、破戒鬼を突きたてて急降下している。遙歌も体勢が悪いのか、今から避ける事なんて出来ない。
 このままじゃぁ、遙歌が……そんなこと、させてたまるものかぁぁ!
「霊精天衣!」
 俺は残り少ない霊力を使って、霊気を体に纏って身体能力を上げると遙歌の所まで跳んだ。そして、若本に飛び蹴りを喰らわした。流石の若本も俺が動き出した事に気付けず、まともに喰らって吹き飛んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 俺はすぐに霊精天衣を解いた。あまり長くやりすぎると、すぐに霊力がなくなってしまう。
「こ、浩輔君……」
「無事で何よりだ、遙歌」
「あ、ありがとう……でも、もう……いたっ!」
 すると、遙歌が足首を押さえる。俺は遙歌の足首を見ると、腫れている所があった。さっき動けなかったのは捻った所為でもあったのか。
「自分の手当ては、自分でしておけ」
「でも、浩輔君だって、霊力が……」
「安心しろ。お前のおかげで見つける事が出来たからな」
 俺はゆっくりと歩いて、ある場所で止まって、地面を触った。すると、そこから青白い光が現れて俺の霊力を回復していく。
「もしかして、さっきの霊脈?」
「あぁ、清らかな霊脈は俺達霊術師には、大事な場所だからな」
 さっき俺が直した霊脈のよって、俺の霊力が少しずつ回復していく。完全に回復するまでに時間が掛かるけど大分回復してきた。
「……やってくれたな、浅川浩輔」
 吹き飛ばされた所から、若本が立ち上がった。
「あぁ、早いけど選手交代だ。また俺が相手になってやる。それに、お前は俺が救ってやる」
「私を救いだと!? 出来るものなら、やってみろ!」
 若本は破戒鬼を振り下ろす。俺はそれを霊盟剣で受け止める。
「同じ轍を踏んだな。その霊剣で受け止めたら、どうなるのか分かっているはずだろう」
「あぁ、だがな!」
 俺は霊盟剣に力を籠めて破戒鬼を弾いた。
「何っ!?」
「確かに、霊力は奪われるけど、今はそんなに奪われても大丈夫だ。霊力を全部奪われる前に、その妖刀を壊せばいいのだから」
「言ってくれるじゃないか。やれるものなら、やってみろう!」
 若本の破戒鬼と俺の霊盟剣がぶつかった。
 
(かなで視点)
 上の方から、何やら物凄い力がぶつかり合っている。恐らく、若本と浅川が戦っている。
 私も早く行こうと思ったけど、先にあっちも気になるから行ってみた。
「おや、高科さん? どうしたのですか?」
 そこにいた松井が私に気付いた。頭に犬の耳に、尻尾が生えている。
「ちょっとね。この辺りにいた妖怪達の事が気になったから来てみたのよ」
 さっきまではこの辺りにかなりの妖気を感じたから、心配していたけど、あの光が起きてからは全く感じなくなっていたから、どうなっているのかを見に来たのだ。
「それで、ここにいた妖怪達はどうなったの?」
「今は見てのとおり、意識を失っている状態ですよ。源一郎は外にいた妖怪達を見てくると言って、外に行っています」
「そうなんだ……」
 つまり、さっきのでここの妖怪達は誰も消えたりしていなかったと言う事か……
「良かった……」
何だか、少しだけホッとした様な気がする。
「おやおや、あんなに妖怪を嫌っていた高科さんが、妖怪が無事だと知って、そんな良い顔するとは思いませんでしたね」
「なっ!?」
 松井はニヤニヤと私の顔を見ている。私はそっぽ向くけど、彼の笑い声が聞こえてくる。遙歌の言うとおり、こいつは本当に分からない奴ね。
「おお、何だ? 高科君が戻ってきたのか?」
 すると、外から大和が戻ってきた。
「浩輔達は、まだ上で戦っているみたいだね。ただ、相手の妖気が以上に高いですね」
「まぁ、千年ぐらい生きている妖怪だからな。大妖怪ぐらいの力を持っていてもおかしくないだろう。コウの方は霊力を何とか回復しているみたいだけど、また徐々に減っていているな」
 確かに、ここから真上ぐらいに浅川の霊力や若本の妖力が分かる。遙歌の霊力はまだあるし、浅川の妹の妖力もほんの少しだけある。まだ上では戦いが終わっていない。
「このままじゃぁ、マズいかも知れないな。コウの方が、また押され始めてきたな……」
 浅川の霊力が一定に減ったり、急に大きく減ったりしている。
「もしかして、霊剣の力を使って霊力が減っているのかも知れない」
 霊剣の様な物は大抵霊力を消耗し続ける。だから、あいつの霊力は一定に減っているのかも知れない。このままじゃぁ、霊力がなくなってしまうわよ。そうなったら、霊力は二度と回復出来ずに、もう霊術師として役に立たないわよ。
「だとしたら、高科君は急いでコウ達の加勢に行ってやれ。お前なら、コウ達を助ける事が出来るはずだ」
「そのつもりだけど、あんた達はどうするつもりなの?」
「俺達はここにいる妖怪達を安全な所まで避難させる。こう言うのは、こっちの仕事だからな。暴走している妖怪を止めるのは、退魔巫女の仕事だろう」
「浩輔達を頼めるかな、高科さん」
「……分かったわ」
 妖怪に指示されるのは少し癪だけど、言っている事は正しい。私が行って、遙歌達を助けてあげないといけない。私にとって、大切な人達だから。私を友達と言ってくれた遙歌、私の事を信じてくれている浅川……だからこそ、貴方達の力になりたい。
「それじゃぁ、ここはお願いするわよ」
 私は浅川達のいる所に向かって走った。
 
 かなでが浩輔達に向かう所を見送る源一郎と勇輝。
「いやぁ、コウも隅に置けないな。名波君に妹さん、それに高科君と来た。モテモテだね」
「でも、浩輔本人はどうでしょうね? 彼はかなり鈍感ですからね」
 やれやれと首を振る勇輝。遙歌の事、どう思っているのとか、恋愛関係の話を持ち出しても、浩輔は率直に答えているのだ。
「まぁ、この先どうなるのかは見物だな」
「確かに面白そうなシチュエーションですけど……」
 勇輝もそれは見てみたいと思っているみたいだけど、ここには今、若本に操られていた妖怪達が倒れている。まずは彼らを避難させる事が重要だと勇輝は考えた。
「僕達はここいる妖怪達を、安全な所まで避難させるんじゃなかったのですか? そんな事をしている暇はないですよ」
「分かっているよ。それじゃぁ、さっさと始めるか」
「えぇ、分かっているのでしたら、良いのですけど……どさくさに紛れて女性の体を触ろうとしたら、浩輔に頼んで退治させるぞ」
「す、すみませんでした! つい、出来心で!」
 源一郎は妖怪の女に手を出そうとしたから、勇輝に止められた。
 
(浩輔視点)
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 息をするのも、やっとになる。ここまでどれだけ刀の交えてきたか……やはり、間違っても相手は千年ぐらい生きている妖怪だ。数十年しか生きていない俺とは力の差がある。俺は何とか技量で何とかなっているけど、そろそろ限界になってきた。
「どうした。霊力がなくなる前に、この破戒鬼を壊すのではないのか」
 若本の破戒鬼は、まだ健在である。傷一つ付けられないなんて……
「くっ……」
 体が少しだけふらついてくる。霊剣の刀身も大分小さくなってきている。このままだと、あと二、三回ぐらい交えてしまったら、完全になくなるかもしれない。
 せめて、霊脈のある所に行って回復したいけど、あそこから、かなり距離が離れてしまっているため、今から行けたとしても、途中で若本に邪魔されてしまう。若本も俺に回復させない様に攻撃してくる。本当に絶体絶命かも知れないな、これは……
「浅川浩輔……これで終わりにしてやる」
 若本が妖刀を構えると、刀身に妖力を籠めていく。おいおい、本当にヤバイかもしれないぞ。これは受け止めずに避けてカウンターを狙いしかない。
「行くぞ!」
 若本は迫ってきて、俺に向かって刀を振るった。
「今だぁ!」
 俺は振るった刀を上手く避けて、カウンターで霊盟剣を使った。よし、これなら、いける!
「かかったなぁぁぁ!」
「何っ!?」
 しかし、ガキンと刀と刀が交わる音が聞こえた。若本は俺のカウンターを読んで、力をあまり出さずにして、俺が攻撃してきたら、妖刀で受け止めるつもりであったのだ。
 妖刀と霊剣が交じり合うと、急激に力を奪われていく。しかも、さっきまでとは比べ様のないほど奪われていく。
「ふんっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ〜!」
 若本の刀で、俺は吹き飛ばされて地面に倒れた。何という力なんだ。
「くっ……あれ……?」
 立ち上がると、ガクンと力が抜けた。そして、霊盟剣の刀身が完全になくなってしまった。
「……ついに霊力がなくなってしまったか……」
 俺は自分の霊力を確かめるが、全く感じない。つまり、今の俺は普通の人間になってしまったのだ。
「どうやら、終わったようだな」
 若本もクスクスと笑っている。最早、勝負が見えたと思っているのだろう。
「浩輔君! 私が時間を稼ぐから、早く逃げて!」
 遙歌が足の痛みを我慢しながら、矢を構えている。
 逃げるだと……お前達を置いて逃げるなんて出来るかよ。だが、どうする? 霊力無しで勝てるほど、若本は甘くない。
 いや、一つだけ、方法はある。俺はその方法はもう考えてあったけど、これをしたら絶対に遙歌は怒ると思ったから、それは避けていたけど。だが、ここで遙歌を置いて逃げるぐらいなら、この方法であいつを倒してみせる。もっとも、失敗したら、取り返しの出来ない事は覚悟の上だ。
「なぁ、霊盟剣。もう一度だけ力を貸してくれないか……俺は遙歌や未紗、ここにいるみんなを守りたいんだ」
 霊盟剣に語りかけると、まるで答えてくれた様に霊盟剣は光った。
「本当にありがとうね。それじゃぁ、行くぞ!」
 俺は霊盟剣に力を籠める。そして、霊盟剣から刀身が現れた。
「何っ!? バカな!? 浅川浩輔の霊力は、もう無いはずだ!?」
 流石に驚いたか。それはそうだろうな。だけど、もう驚いている場合じゃないぞ。
 俺は若本がいる所まで跳んで、霊盟剣を振った。若本は慌てて破戒鬼で受け止める。だが、力に押されて吹き飛んだ。地面に倒れた若本はゆっくりと立ち上がった。
「くっ、何だ、この力は? さっきの霊力とは比べ様のない力だ」
「呆けている場合じゃないぞ! 若本!」
 霊盟剣を縦一文字に構えて突進して突きを入れる。破戒鬼で受け止めるが、破戒鬼の刀身にひびが入りだした。
「な、何故だ!? 一体何をした!?」
「さぁな……くっ!」
 体中がビリビリと電流が流れる様に、痛みが出始めてきた。だが、今はそんな痛みに苦しんでいる場合じゃない。この短い時間で若本を倒さないといけないのだから。
「……まさか、浩輔君。止めて! そんな事したら、浩輔君の体が!?」
 どうやら、遙歌はもう気付いたか。その反応に若本も俺が何をしているのか理解したみたいだ。
「き、貴様……まさか……自分の生命力を使っているのか!?」
 そうだ。俺は自分の中にある生命力、もとい自分の魂を霊力に変換させて、霊盟剣に力を与えているのだ。つまり、命を削っている様なものだ。もちろん、命を削っているのだから、生命力が切れたら、俺は完全に消滅してしまう。その証拠に、さっきから足元から消えかけている。
「な、何故、そこまでの事をする。死に急いだか!?」
「違うな。俺はこの町を守りたい。ここにいるみんなを守りたい。そして、お前を救いたいんだ」
「強欲過ぎるな。その所為でお前は身を削っていると言うのか」
「当然だ。俺は欲張りなんだよ。この町を滅ぼさせない、みんなを死なせたくない、お前をこのままにしたくないからな。だから、俺は戦うんだ!」
 俺はさらに力を入れて若本を吹き飛ばした。壁に激突した若本は体をふらつかせながら、肩で息をしている。
 逆に俺もかなり息が上がっている。体中に痛みが生じているのだからな。
「はぁ、はぁ、はぁ……やはり、お前は凄い奴だと素直に認めよう。ならば、もう分かっているはずだ。私は千年も生きている妖怪だ。体はもうこの様になっている事を……」
 若本の顔や腕がボロボロになっている。やはり、千年も生きていても、肉体は腐っていたのか……よくそんな体であんなに動き回っていたようなものだな。本当に大した奴だよ。
「あぁ、お前を救う方法はただ一つ。お前が安らかに眠れる様に葬る事だろう」
「そうだ。だが、私を安らかに眠る事は出来ない。私は千年もの間、一度も安眠をした事などないからな」
 その辺りも、あの夢で見た事がある。荒和魂村を滅ぼした後、若本は様々な所に旅立っていた。しかし、彼は眠りについても、すぐに目を覚ましていた。彼は怯えていたのだ。深く眠りについてしまったら、荒和魂村で消滅した人間の亡霊に殺されてしまうのではないのかと。若本は千年の間、ずっと一人だった。決して人と交流する事もなく、一人で旅をしていた。だが、俺には彼のこの旅は、何かの謝罪みたいなものではないかと思っていたのだ。あいつは自ら自分の夢を壊してしまったのだ。短い間だったけど、あの村での生活は夢の生活だったのだ。それは本当に幸せを手に入れていたのかもしれない。だが、それを自ら滅ぼしてしまった。自ら夢を壊して、人間達を殺してしまった事に絶望していたのだ。
 だから、ここで俺が若本を安らかに眠らせてあげなければ、彼の魂は解放されない。
「だが、私も易々と滅ぼされない。私の中にある悪魔が私に抗えと言っている」
「だろうな。あんたの心の中にある悪魔こそが、俺が本当に倒さないといけない相手みたいだからな」
 俺と若本は、刀を構えて、その場で動かない。いつ動ける様に集中する。それはまるでお互いの魂を懸けて戦う戦士の戦いの様に……
 そして、お互い同時に動いて刀をぶつけ合った。刀をぶつけては離れて、避けたり刀で受け止めたりと攻防が続く。
 若本が縦に振ると俺は横に避けて、俺が突きを入れると若本は左に避ける。お互い、一撃一撃に渾身を籠めているから集中が途切れてしまうと、やられてしまうのは分かっているみたいだ。
 だが、あいつは体力だけ減っていくけど、こっちは自分の生命力を使っているから、長期戦になるに連れて不利になってくる。それに、どんどん力が抜け始めてきている。
 だが、こっちにも勝機はある。若本の破戒鬼にあるひびがどんどん大きくなってきている。あと何発か当てたら壊れるはずだ。若本もそれに気にして避け始めていくが、こっちの速さに追いついていないため、ダメージを少しずつ与えていっている。
 刀を交じり合い、お互い弾き飛ばして距離を取った。俺も若本も息が上がっていて、殆ど体力の限界である。
「はぁ、はぁ、はぁ……どうやら、そろそろ決めないといけないみたいだな……」
「はぁ、はぁ、はぁ……そうだな。決着をつけようじゃないか……」
 刀を構えて、お互いの力を刃に籠める。こっちはかなり手に痺れが生じてきたけど、耐えてくれ。これで最後だ。持ち堪えてくれ。
「行くぞ、若本!」
「来るが良い、浅川浩輔!」
 俺は前に跳んで、若本の所まで行く。
 そして、お互いの渾身の一撃をぶつけ合った。バチバチと衝撃が俺達の周りに起きている。
「どうやら、勝負は決まったようだな。この勝負、私の勝ちだ!」
 若本が力を入れてきて、俺は押されていく。このままだと、押し負けて……
「ま、負けるものかぁぁ!」
 絶対に……絶対に、負けない!
 その思いが答えてくれたのか、破戒鬼の刃がついに折れた。刃は宙を舞い、地面に刺さった。
「これで、どうだぁぁぁぁ〜!」
俺は刀を縦一文字に構えて、若本の心臓を狙って貫いた。
「……ぐはっ!」
 若本の口から血が噴き出した。そして、そのまま後ろに倒れていった。
「はぁ、はぁ、はぁ……か、勝った…のか?」
 いまいち実感がなかった。こんな形で終わってしまうなんて思わなかった。
「……見事だった……浅川…浩輔……」
 若本は清々しい顔で笑っている。俺はその横で腰を下ろした。
「お前は凄い妖怪だよ……お前と戦えて本当に良かったよ……」
「それは……私のセリフだ……お前の様な人間と戦えて……私は嬉しいと思っている……」
 千年も生きている妖怪に言われると、少し照れるな。
「お前の言うとおりだ……私は…運命に狂わされていた……私は、最後まで……憎みきれなかった……」
 あぁ、そうだろうな……若本には最後まで人間を憎む事なんて出来なかったんだ。
「あの頃の……幸せな世界を……たった一つの運命に壊されてしまった時……その運命に抗えさえすれば……変わっていたのだろうか……」
「……分からない。結果的に荒和魂村は滅んでしまった。それは決まっていた事なのかも知れない。それは変えられない事実だったのかも知れない」
「……あぁ…そうだろうな……だが……少なくとも……私自身が滅ぼす事は……なかったのかもしれないな……運命を受け入れてしまい……悪魔に魂を売ってしまった私は……もはや罪人だ……」
「そうなのかも知れないな。だけど、その罪も漸く祓う事が出来たはずだ。お前は解放されたんだ」
「……そうだな……お前のおかげで……私は……千年の呪縛から……解放された……感謝する……」
「若本、俺はあんたに誓うよ。お前の夢を俺が引き継いでみせる。この霊盟町を、もっと良い町にしてみせる」
 あの荒和魂村の様な悲劇や惨劇など、俺が起こさない。人間と妖怪が共存している素晴らしい町にしてみせる。
「……そうか……お前の意思……見届けようじゃないか……」
「安心しろ。先に地獄で待っていろ。俺も死んだら地獄行きだと決まっているからな」
「……お前という奴は……」
 ふふふと笑う若本。
「……こうして笑うなど……久しぶりだ……それに……この空も……昔のまま……」
 若本が見ているのは、天井の穴から見えている青空だった。
「……漸く解放された……先に逝かせてもらう……」
「あぁ……」
「その前に……一つだけ……教えてやる……」
「何だ?」
「お前も…私の夢を見たのなら知っているはずだ……あの黒の神主を……」
 あぁ、六亡星滅殺方陣をお前に教えた、あの黒い神主の事か……
「今日…久々に奴に……会った」
 会ったって!? 千年前にも会っっていて、今日会ったってと言う事は、奴は千年も生きていると言う事か!? そんな事、ありえるのか。
「奴が……何者なのかは……分からない……だが…・・・奴は……人間でも…妖怪でもないのかも知れない……気を付ける事だ……」
 なるほど、確かにあの黒い神主には気を付ける必要があるのかもしれないな。だが、何か違和感がある。一体、何だろうか?
「それだけだ……では……」
「あぁ……地獄で行っていろよ。もしかしたら、力を借りに行くかも知れないからな」
「……期待しないで待っていよう……これで……安らかに……眠れる……」
 若本はゆっくりと目を閉じていき、息を引き取った。
 そして、灰になっていき、そのまま消えていった。
「……元気でな」
 若本豪鬼、あいつはただ運命に狂わされた妖怪だったけど、これで漸く救われた。そんな気がした。
「浩輔君!」
「お兄ちゃん!」
 遙歌と未紗が俺のいる所まで走ってきた。どうやら、みんな無事に済んだみたいだな。本当に良かった……
「浩輔君!」
 遙歌が俺を抱き締めようとする。しかし……
「ふぇっ?」
「えっ?」
 遙歌の体が透けていき、地面に倒れた。いや、違う……俺の体が透けているんだ。
「お兄ちゃん、体が!?」
 未紗にも俺が消えかかっているのに気付いたみたいだ。そうか……霊力だけでなく生命力まで使いきってしまったのか。それが分かってしまうと、急に体の力が抜けてきてしまい、バタリと倒れた。
「浩輔君!?」
 遙歌が俺の側に来た。
「浩輔君、しっかりして!」
 いや、しっかりして言われても……もう動けないや……口を動かそうにも、声も出ない。
 本当にヤバイな、これは……若本にあんな事を言ったのに、もうそっちに逝ってしまうのかよ……
「嫌よ……嫌だ! 消えないで!」
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
 遙歌も未紗も涙をポロポロと零している。そんなに泣くなよ。頼むから……
 くそっ……視界が……消えていく……もう……意識も……なくなって……いく……
 
(遙歌視点)
 浩輔君がゆっくりと目を閉じていく。このまま、死んでしまうの? そんなの嫌!
「遙歌!?」
 すると、後ろからかなでちゃんの声が聞こえた。
「これは……どう言う事なの?」
 かなでちゃんは、この状況に混乱しているみたい。私が要点だけ説明した。
「それじゃぁ、こいつは……」
 かなでちゃんも漸く理解してくれた。みーちゃんはずっと泣いてばかりだし、かなでちゃんも少なからず涙を流している。
 私はどうしたら良いの? もうすぐ、浩輔君は消えてしまう。私はこのまま彼が消えるのを見ているだけなの? 嫌だよ……そんなの嫌だよ……だって、私は……浩輔君の事……
『遙歌……遙歌……』
 えっ? 誰?
 私はキョロキョロと辺りを見渡す。今の声は、みーちゃんでもかなでちゃんでもない声がした。もっと大人の女性の声がした。
『聞こえますか。この声が聞こえますか、遙歌?』
「聞こえます。貴女は誰ですか?」
 私は声のした方に向かって話しかける。
『漸く、聞こえましたか……私はこの日をどれだけ待っていた事か』
「あの、本当に誰なんですか?」
『私はこの霊盟町を守っている者。その者は、ここで消えるわけにはいかないのです』
「守っている者? ひょっとして、大昔に降臨した神様ですか!?」
 お爺様がいつも話してくれた大昔の神話。人間と妖怪の争いが起きた時に降臨した神様。
「そ、それより……浩輔君を助けてくれるのですか!?」
『彼をここで失えば、全てが闇に染まり、世界の終焉が訪れる。彼には生きてもらわなければならないのです』
「どうしてですか? 浩輔君には何か特別な力でもあるのですか?」
 今でも特別な力を持っていそうな感じだけど、あの神様が失いたくないほど重要な人物だなんて、凄いよ。
『彼だけではありません。貴女の力も必要なのです』
「私も?」
「そうです。今の彼を救えるのは貴女だけなのです」
 私が、浩輔君を助ける事が出来る?
「で、でも、どうやってですか? 霊力も失って、生命力も失って、もうすぐ消えてしまうのですよ。どうやったら、良いのですか!?」
『簡単な事で、彼の霊力はまだ残っています。その証拠に霊盟剣の刃を残っています』
「えっ? 霊盟剣の刃?」
 私は霊盟剣がある方に振り向いた。そこには若本さんの灰に霊盟剣が地面に刺さっている状態である。刃はまだ残っている。つまり、浩輔君の霊力はまだ残っている。
『霊盟剣は願いを叶える霊剣。彼の生命力はその剣の霊力に、まだ残っています。それを使えば、彼の生命力は元に戻ります。そして、彼の霊力が少しだけ復活します』
 あの霊盟剣さえあれば、浩輔君は救える。
『しかし、それだけでは彼は目を覚ます事は出来ないでしょう。霊力も生命力も少しだけになっています。ですので、残りは貴女が彼に霊力を分けてあげるのです』
「霊力を分ける……それって!?」
 き、きききき……キスですか!? 確かに霊力の回復には、それが一番ですけど……かなでちゃんとは一度したけど、浩輔君とは一度もした事がないのですけど!
『大丈夫ですよ☆ ババーンとやっちゃいましょう☆』
 何か軽くなっていませんか、神様!? しかも語尾に☆って……
『ゴホン…ですが、そろそろ始めないと、彼も殆ど消えかけていますから』
 そ、そうだね……でも……
『貴女の気持ちは知っています。ですから、その気持ちを素直に……』
 うん、そうだよ。浩輔君を助けられるのが自分だけだと言うのなら、私が助けないと。
「ありがとうございます、神様」
『頑張って下さい。私は静かに貴方達を見守っていますから……』
 そう言って、ス〜と声が消えていった。今まで、時間が止まっていたかの様に感じたけど、浩輔君は今も消えそうになっている。
 私は急いで霊盟剣を持った。剣からは浩輔君の霊力が少しだけ感じる。まだ、残っているんだ。ならば、急がないと……
「遙歌!? どうする気なの?」
 かなでちゃん達が見ている中で、私は霊盟剣を浩輔君の上に乗せた。すると、霊盟剣が光り出して、浩輔君の生命力が少しだけ回復して霊力も復活した。手を握っても掴む事が出来た。これなら、いけるかもしれない。あとは……浩輔君と……
「……素直に……か……」
 そうだよね。私は元からそうだったけど、それを浩輔君に伝えていないし、浩輔君の気持ちを知ろうとも思わなかった。今の関係で、十分満足していたのかも知れない。でも、それじゃぁ、きっと後悔する。想いを告げなかった事に……
「浩輔君……私は……貴方の事……」
 私はゆっくりと浩輔君の口に自分の口を合わせた。
 好きだよ……浩輔君。だから、目を開けて……
 
 
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遙歌「読んでくれました皆さん、はじめまして。『霊盟摩訶不思議探検会、後書きコーナー(仮)』のパーソナリティーの名波遙歌です」
かなで「高科かなでです」
遙歌「長かった……ついに、ここまで来ましたね」
かなで「えぇ……よく頑張ったわね。そこは素直に褒めてあげるわ」
遙歌「漸く若本を倒す事が出来ましたね。彼もまた運命に翻弄された妖怪でしたけど、最後は安らかに眠る事が出来たでしょう」
かなで「それって、私が前までやっていた事と変わりないんじゃないの?」
遙歌「暴走した妖怪を浄化してしまうと、天国にも地獄にも行けずに無の世界に連れて行かれて、来世に飛ばされるんだよ。でも、若本の様に自ら消えると、地獄行きになるけど体は残るんだよ」
かなで「なるほどね。それで……あいつとキスした感想は?」
遙歌「かかかか、かなでちゃん!! 思い出させないで!!」
かなで「まぁ、良いけど。浅川は結局どうなったのよ?」
遙歌「そ、それは……次回のエピローグで!!」
かなで「逃げたわね……」
遙歌「それでは、本日はここまで」
かなで「次回で第一期は最後ですけど、お会いしましょう」
 
 
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